2014年11月6日木曜日

契約の更改

司法書士の岡川です

プロ野球選手の契約更改の季節です。

私はあまりプロ野球選手の年俸に興味はないのですが、やはりプロ野球ファンの皆さんにとっては重要な情報なのでしょう。
ニュースでも、多くの有名選手の来年の年俸額(推定)が発表されています。

さて、このイベントを「契約更改」といいますが、「更改」とは何でしょうか。

記者会見をやって契約内容を発表しているから「契約公開」だと思っていた人もいるのではありませんか?
私は小さい頃は「公開」だと思っていました。


更改というのは、民法に規定のある制度で、債務の要素を変更することにより、元の債務を消滅させ、同時に別の新たな債務が生じるという契約(制度)です(民法513条)。

債務の要素の変更としては、「債務の目的の変更」「債権者の変更」「債務者の変更」があります。

例えば、「冷蔵庫を贈与する」という契約をしていたが、後に「電子レンジを贈与する」という契約に変更する場合、これは給付の内容が変更しているので更改となります。
あるいは、「冷蔵庫を贈与する」という契約をしていたが、やっぱり代金を受け取ることにすれば、契約の性質が贈与契約から売買契約に
変更しているので、これも更改ということになります。

とはいえ、このような単純な契約であれば、合意解除の上で新たな契約を締結すれば済みます。
また、債権者の変更は債権譲渡によって実現可能ですし、債務者の変更も(免責的)債務引受によることが可能です。

そのため、現代の日本では、更改という制度がの有用性はそれほど高くありません。
微妙に要件効果が異なるので、使い分けは一応可能なので、制度としては残っています。


さて、更改とは、そういう契約なわけですが、プロ野球選手が契約期間(1年契約なら1年)が満了し、次の契約を締結することを契約更改といっていますが、これは法律用語としての「更改」とは異なります。
期間満了で債務が消滅しているのだから、更改によって元の債務を消滅させているわけではないし、野球選手に「来年からサッカーをしろ」と転向させるようなものでもありません。

これは、借家の賃貸借契約の期間が満了したときに、同一条件で(あるいは家賃を変更して)引き続き借りるのと似ています。
つまり、契約「更改」ではなくて、契約「更新」というほうが正確です。

「契約更新」と書いているニュースもチラホラとありますね。


では、今日はこの辺で。


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