2014年11月5日水曜日

一事不再理の原則

司法書士の岡川です。

舞鶴女子高生殺害事件で無罪が確定して釈放された元被告人が、殺人未遂事件を起こしたようです。
今のところ、正当防衛を主張しているようですが、警察の取り調べを受けることになります。

別件だとは分かっていても、同一人物に関する2件の事件。
前の事件についても気になってくる人も少なくないでしょう。
しかし、それはそれ、これはこれ、冷静に切り分けて考えなければなりません。


ところで、一度無罪が確定した事件で、 新証拠が出てきて「やっぱりあいつが犯人だった」ということが分かった場合はどうなるか。

これが逆の場合、すなわち、有罪判決が確定した後にそれを覆す新証拠が出てきた場合は、「再審請求」をすることで、無罪への道が開かれます(もちろん、かなり厳しいですが)。

それと同じように考えると、例えば検察が再審請求してもう一度審理しなおすこともありそうですが、実はそうではありません。
 刑事訴訟法の再審の規定は、「有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。」(刑訴435条)のようになっており、無罪の確定判決に対する規定は存在しないのです。

もちろん、同じ人を同じ罪で再び起訴することも許されません。
刑事訴訟法では、有罪無罪にかかわらず、一度確定判決を経た事件に関して、同一事件で再度起訴した場合、「免訴」が言い渡されて手続が打ち切られます(刑訴337条)。


このように、一度裁判が確定した場合に、再び実体審理を行ってはならないという刑事訴訟法の原則を「一事不再理」といいます。
(日本国憲法39条が一事不再理の原則を定めているという見解もあります)


背景には、二回も三回も刑事訴追の負担を与えてはならない(「二重の危険」の禁止)という考えがあると解されています(憲法39条は、二重の危険の禁止を定めていると考えます)。

国民に過度な負担を与えないということは、「真犯人を取り逃がさない」ことよりも重視されるのです。

推定無罪の原則と通じるところがありますね。

では、今日はこの辺で。


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