2015年1月13日火曜日

控訴と上告の理由

司法書士の岡川です
司法(裁判)制度の話がずっと続きますが、ここまできたらとことん行きましょう。

おさらいですが、第一審判決に不服がある場合に上級裁判所に不服申立て(上訴)をすることを控訴といい、控訴審判決に対する上訴を上告といいます。
例外的に、第一審判決に対して上告する場合もありますが、とりあえずこれは無視しましょう。

民事訴訟では、判決に不服があれば控訴することができ、控訴理由は特に制限されていません。
「事実認定がおかしい」でも「その法律の解釈は間違っている」でも何でも構いません。

これに対し、刑事訴訟では、控訴理由とすることができる事由が限定されています。
細かく挙げれば色々ありますが、主要なところでは、①第一審訴訟手続の法令違反、②事実誤認、③法令適用の誤り、④量刑不当のいずれかであって、特に重大な法令違反がある場合や判決に影響を及ぼすことが明らかな場合が控訴理由となります。


上告の場合は、更に理由とできるものに絞りがかけられます。

民事訴訟では、①憲法解釈の誤りや憲法違反、②一定の重大な手続違反、の2つが上告理由となります。
上告審が高等裁判所の場合(一審が簡裁の場合)、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反というのも上告理由となります。

上告審は法律審なので、基本的には事実に認定の誤りなどを理由として上告をすることはできません。
また、法律問題でも、単なる法令違反では受け付けてくれません。

ただし、裏道(?)として、「上告受理申立て」という制度があります。
最高裁は、原判決が最高裁判例に反する場合や、法令の解釈に関する重要な事項を含む判断が含まれている場合は、上告理由がなくても上告を受理することができるので、「受理して下さい」という申立てをするわけです。

ちなみに、事実認定の誤りが経験則違反であるとして上告受理の申立てがされることも認められています。
経験則違反だと法令違反とか法令解釈の問題になるからです。
裁判官は経験則に則って(つまり常識的な)判断をしなければならないので、そこから大きく外れた判断をするのは、法令の適用や解釈に関する違法があるということになるわけです。

ものは言いようですね。

もちろん何でもかんでも経験則違反が認められるものではありませんが。


刑事訴訟法の上告理由も似たようなもので、憲法解釈の誤りや憲法違反があると上告理由となります。
それに加えて、民事訴訟と違って、最高裁判例に反することも上告理由となります。

民事訴訟法の上告受理の申立てと同じような制度もあり、法令の解釈に関する重要な事項を含む場合、最高裁判所は、上告を受理することができます。


とまあこんな具合に、何やかんやと理由をつけて、上告することは可能なのですが、実際に受理されて、しかもその主張が通って原判決が破棄されるのはなかなか困難です。

では、今日はこの辺で。

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