2015年3月24日火曜日

保護処分について

司法書士の岡川です。

更新が遅いせいで、まだまだ少年法の話が続きます。
今日は保護処分の話。

罪を犯した場合、刑事訴訟手続を経て、懲役や罰金等の刑罰(制裁)を科されるのが基本です。

しかし、少年に非行があった場合、まずは家庭裁判所での審判があります。
家庭裁判所では、その非行少年に「刑罰を科すかどうか」を判断することはありません。

審判の中で非行事実(犯罪も含む)と要保護性が認められた場合に家庭裁判所が下す最終的な判断の中心となるのが「保護処分」です。
保護処分も終局的な判断なので、保護処分となった少年は、そこからさらに刑事処分が行われることはありません。

犯罪少年も含め、非行少年に対しては、基本的に刑事処分ではなく保護処分で対応するというのが少年法の基本的な考え方です。

これが「少年が守られ過ぎている」という批判の対象にもなるわけですが、成人の場合も常に「罪を犯せば必ず刑罰が科される」というものではなく、微罪処分やら起訴猶予やら執行猶予といった制度が用意されており、しかも終局処分の大部分を占めています。
「刑罰を科さずに更生を図る」という考えは、必ずしも少年法特有のものではないのです。


さて、保護処分には、次の3種類あります。
  • 保護観察
  • 児童自立支援施設等送致
  • 少年院送致

いずれも、非行に対する制裁ではなく、「非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整」を行うための処分です。


保護観察というのは、少年院や自立支援施設などの施設に収容するのではなく、かといって野放しにするのでもなく、通常の社会生活を送りながら、保護司や保護観察官の指導監督と補導救護により更生を図る手続です。

保護観察については、実は少年法ではなくて更生保護法という法律に規定されています。
というのも、保護観察は少年法特有のものではなく、例えば仮釈放された人とか執行猶予になった人なども、保護観察に付されることがあります。

保護観察中は、色々な遵守事項が定められており、保護観察官や保護司の面接を受けたり、生活状況の報告をする義務を負っています。


保護処分として保護観察の次に多く用いられるのは、少年院送致です。
少年院は、「未成年者が入る刑務所」といったイメージもあるかもしれませんが、少年院は、必ずしもそうではありません。
刑務所は制裁としての懲役を科す施設であるのに対し、少年院は保護処分として収容される(場合もある)施設だからです。

少年院にもいろいろあって説明が長くなるので、また今度の機会に。


それから、件数としてはあまり多くは無いですが、児童自立支援施設や児童養護施設への送致という保護処分もあります。
文字通り、児童自立支援施設や児童養護施設へ送るわけですが、これらの施設のこともまた機会があれば。


さて、少年法では刑事処分より保護処分が優先されます。
かといって、どんなに凶悪事件であっても常に保護処分で終わるというわけではなく、少年であっても刑事処分が科される場合もあります。

もっとも、家庭裁判所は、有罪無罪を言い渡す権限を有していませんので、刑事処分が相当だと判断すれば、いったん検察官に事件を戻して、検察官から地方裁判所や簡易裁判所に起訴してもらう必要があります。

検察官に送致する手続を「逆送」といいます(検察官から送致された事件を検察官に戻すのでこう呼ばれます)。

少年の刑事事件については、また次回です。


では、今日はこの辺で。

少年法シリーズ
1.少年法が対象とする少年
2.少年法の意義と理念
3.少年法における手続と処分
4.少年審判が始まるまで
5.少年審判とはどんな手続か
6.保護処分について ← いまここ
7.少年法と刑事手続 

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