2015年3月3日火曜日

少年法が対象とする少年

司法書士の岡川です。

少年(20歳未満の者)が犯罪を行っても「少年法に守られている」といわれます。
事実、守られているのですが、具体的にはどう守られているのでしょうか。
改めて少年法について書いていこうと思います。


そもそも少年法は、犯罪少年(罪を犯した少年)だけを対象とした法律ではありません。
少年法1条には、「非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」とあり、「非行少年」が対象とされています。

この非行少年には、「犯罪少年」「触法少年」「虞犯少年」の3種類があります(「虞犯」は「ぐはん」と読みます)。

「犯罪少年」は文字通り犯罪(に該当する行為)をした少年です。
「殺人」とか「窃盗」とか、刑法その他の刑罰法令に規定された行為をすれば、一般的には「罪を犯した」ということになりますが、刑法41条に「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定されているため、14歳未満の行為では犯罪が成立しません。
誤解している方もあるかもしれませんが、14歳未満に犯罪が成立しないというのは少年法の規定ではなくて、刑法の規定なのです。
そのため、「犯罪少年」とは「14歳以上20歳未満で、刑罰法令に違反する行為をした者」ということになります。

では、責任年齢14歳未満の少年の場合はどうなるかというと、「14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」という類型に該当します。
これを「触法少年」といいます。

14歳未満では犯罪が成立しないので、何をやっても刑事処分の対象とはなりませんが、少年法ではそういう少年も非行少年の中に含めて保護処分の対象としています。

さらに、一定の事由(虞犯事由)があって、その性格や環境に照らして、将来罪を犯したり刑罰法令に違反するおそれ(虞犯性)がある少年も非行少年に含まれます。
これを「虞犯少年」といいます。

虞犯事由としては、

  • 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
  • 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
  • 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
  • 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

の4つが挙げられます。

刑法は、必ず「罪を犯した人」に対して適用され、「罪を犯しそうな人」を処罰の対象とすることはありません。
そんなことをすれば、処罰の対象が際限なく広がり、国家が国民の権利、自由を不当に制約することになるからです。

※(やや専門的なので読み飛ばしてもよいですが)犯罪論では、犯罪という事象の客観面を重視し、具体的な「行為」を刑罰の対象とする考え方を客観主義といいます。これに対して、刑事責任の基礎を「悪い性格」とか「性格の危険性」に求める考え方を主観主義といいます。主観主義では、犯罪行為は、行為者の危険な性格の表れ(徴表)と考え、行為それ自体ではなく、そこに表れている性格を問題とします。そうであれば、極論すれば、実際に犯罪行為がなくても、その危険な性格を認識できれば、処罰の対象とすることが正当化され得ることにもなります。そこで、現代の日本では基本的に客観主義に立脚した犯罪論が支配的となっています。(以上、細かい解説終わり)

ただし、少年法は必ずしも非行少年を処罰することを目的とした法律ではありません。
虞犯少年が、犯罪少年や触法少年になってしまう前に、その性格を矯正するための措置を取ることができるようになっています。


実際に上手く機能しているかどうかはさておき、少年法の理念や目的には色々な側面があります。
虞犯少年が少年法の対象となっていることからも分かるように、少年法は、単に「犯罪少年の刑を軽くするための法律」ではありません。
罪を犯した少年の再犯を防ぎ、罪を犯す前の少年の犯罪を防ぐというのも少年法のひとつの側面なのです。

次回、少年法の理念とか目的とか、その辺の話をしようと思います。

では、今日はこの辺で。

少年法シリーズ
1.少年法が対象とする少年 ← いまここ
2.少年法の意義と理念
3.少年法における手続と処分
4.少年審判が始まるまで
5.少年審判とはどんな手続か
6.保護処分について
7.少年法と刑事手続

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