2015年3月19日木曜日

少年審判とはどんな手続か

司法書士の岡川です。

川崎市の中学1年生殺害事件で逮捕された少年が家裁送致になったようですね。
ブログの更新をノロノロとしていたら、図らずも現実の事件の手続と進み具合が一致しました。

警察に逮捕された18歳の少年A(犯罪少年)は、通常の刑事手続と同様に検察官に送致(いわゆる「送検」)されており、次のステップとして検察官から家庭裁判所に送致されました。
検察がいきなり起訴するのではなく、まずは家裁へ全件送致が少年事件の原則です。


さて、家庭裁判所では、少年審判が開始することになります。

何度も繰り返しになりますが、少年審判は刑事訴訟とは異なります。
訴追する側の検察官と弁護する側の弁護人が法廷でバトルを繰り広げることはありません。

少年法22条は、「審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない」と規定しており、司法的機能だけでなく、福祉的機能を有するとされています。
これまた訴訟手続とは違って、少年審判は原則として非公開ですが、平成20年の少年法改正により、一定の事件において被害者が傍聴することができるようになっています。
法を適用して有罪か無罪かを決める訴訟と違い、個別の非行少年の問題に対応しなければならないので、裁判官の裁量が大きいのも特徴です。


少年審判では、少年の要保護性と非行事実が審判の対象です。
つまり、非行少年について保護の必要性(再非行の危険性や矯正可能性など)と、非行事実が審理され、少年の処遇が決められることになります。

審判廷には、少年や裁判官・書記官が出席するのはもちろんですが、場合によっては、家庭裁判所調査官、保護者、付添人(保護者や弁護士等)、その他相当と認められる者(例えば担任の教員など)が出席することもあります。
非行事実の認定のため、検察官が出席することもあります(審判に検察が関与する場合は、少年側に必ず弁護士の付添人がつくことになります)。


審理の結果、最終的には、家庭裁判所は何らかの最終決定を行います。
具体的には、
  • 保護処分をする
  • 刑事処分が相当として検察官に送致する(逆送)
  • 児童福祉法上の措置が相当として都道府県知事や児童相談所に送致する
  • 処分しない(不処分決定)
のいずれかとなります。

保護処分や児童相談所等へ送致される場合は、刑罰を科されることはありません(処罰ではなく教育が行われる)。
他方、検察官に送致されると、ここから通常の事件と同じように刑事訴訟手続(いわゆる刑事裁判)に移行することになります。


川崎のような事件では、原則として逆送されることになります。
なので、この事件が逆送される前に、次回は先に保護処分について紹介しておきましょう。

では、今日はこの辺で。

少年法シリーズ
1.少年法が対象とする少年
2.少年法の意義と理念
3.少年法における手続と処分
4.少年審判が始まるまで
5.少年審判とはどんな手続か ← いまここ
6.保護処分について
7.少年法と刑事手続 

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