裁判所には、主に民事執行手続において登場する「執行官」という公務員がいます。
裁判所法において、裁判官とか裁判所書記官とか裁判所調査官などと並んで、「各地方裁判所に執行官を置く」と規定されており、地方裁判所に所属している裁判所職員です。
何をする人なのかというと、裁判所法には「裁判の執行、裁判所の発する文書の送達その他の事務」を行うと規定されています。
さらに、執行官法には、
一 民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)、民事保全法 (平成元年法律第九十一号)その他の法令において執行官が取り扱うべきものとされている事務が執行官の職務とされています。
二 民事執行法 の規定による民事執行、民事保全法 の規定による保全執行その他私法上の権利を実現し又は保全するための手続を構成する物の保管、管理、換価その他の行為に係る事務で、裁判において執行官が取り扱うべきものとされたもの
要するに「執行官がやると決められている事務が執行官の職務だ」とのことです。
なんか、こう見ると裁判所法のほうが具体的ですね。
執行官の具体的な仕事については、民事訴訟法だとか民事執行法だとかに書かれています。
まあ色々あるんですが、典型的には、民事執行手続(強制執行とか担保権の実行としての競売など)で、執行官が執行機関となっている手続(あるいは、執行機関である執行裁判所の補助として行う手続)があります。
執行官が執行機関となる(執行官に申し立てる)のは、例えば、動産執行だとか建物明渡執行とかですね。
金銭請求を認容する判決等の債務名義に基づき、債務者の動産を差し押さえて売却する手続は、執行官が行います。
債務者の家に入って行き、財産的価値のありそうな物に「差押」と書かれた紙(実際は「差押物件標目票」と書いています)をペタペタと貼り付けるお仕事ですね。
建物明渡執行は、家賃を支払わない居住者に対して建物明渡請求をして、その勝訴判決等に基づいて行うものです。
債務者の家に入って行って、債務者を追い出し、中の荷物を撤去するお仕事です(実際に荷物を運ぶのは業者が行いますが、それを指揮するのが執行官です)。
動産引渡執行というのもあります。
特定の動産(例えば貸していたパソコンとか自転車とか犬とかサルとかキジとか)を返せ、と請求(動産引渡請求)して、その債務名義を取得すれば、執行官に申し立てて奪い返してもらうことができます。
執行以外では、送達事務が執行官の仕事です。
これについては、次回書こうと思います。
実は、執行官というのは裁判所職員(公務員)でありながら、裁判官とか書記官とは違って独立採算制です。
利用者からの手数料が執行官の収入となるので、頑張れば頑張るほど所得が増えます。
なので、執行官の手続を申し立てるには、手数料と実費を予納しなければなりません(余ったら返してもらえます)。
執行費用は最終的には債務者持ちになりますが、実際には債権者が立て替えておかなければ手続が進みません。
裁判所の中(執行官室)にいるのですが、個人事業主みたいな感じですね。
ただ、完全な個人事業主と違って手数料は自由に決められません。
また、国から一定の収入が保証されてます(その額に達しなければ国から補助金が出るようです)。
なかなか特殊な公務員ですね。
では、今日はこの辺で。
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