司法書士の岡川です。
突然抽象的な話になりますが、今日は「物権」のお話。
物を直接的に支配する権利を、「物権」といいます。
物の支配の仕方(利用方法)としては、自分で使用したり他人に貸し出したり担保に入れたりと様々です。
物権は、物に対する排他的権利なので、物権の内容を個人が勝手に作って決めてしまうと、その物に関する権利関係が錯綜してしまう恐れがあります。
したがって、権利関係の混乱を避けるため、個人が勝手に何らかの物権を作り出すことはできないとされています。
これを「物権法定主義」といいます(民法175条)。
利用方法に応じて、物権の中にもいろいろな権利あるのですが、その典型例というか基本形が「所有権」です。
所有権は、物に対する全面的な支配権であり、その物を自由に使用収益し、処分することができる権利です。
「あなたの物」とは、「あなたが所有権を有している物」のことをいいます。
所有権が全面的な支配権であるのに対し、所有権に含まれる様々な支配の態様のうち、一部だけ認められる物権があります。
所有権の権能のうち一部に制限されているという意味で、「制限物権」といいます。
ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、例えば「地上権」という物権があります。
地上権は、土地を使用収益することだけ認められる権利です。
土地に地上権を設定すれば、その土地に建物を建てて土地を使用することができます。
しかし、処分することは認められませんので、地上権を有する人が、その土地を担保に入れたりすることはできません(細かいことをいうと、「地上権に担保を設定する」ことは可能ですが)。
その土地の所有権を有していれば、使用することも貸し出すことも担保に入れることもできるので、地上権は所有権と比べてできることが制限されていることが分かります。
制限物権は、さらに2種類に大別できます。
地上権のように、物を使用する(使用価値を一部支配する)ための権利を「用益物権」といいます。
他方、物の交換価値のみを支配する権利を「担保物権」といいます。
交換価値を支配するとは、対象物を使用することはできませんが、債務の履行を確保するため、いざとなればその物を売り払って代金を取得したりすることをいいます。
あまり一気に細かい話をするのも大変なので、次回以降、個別の物権についても紹介していこうと思います。
では、今日はこの辺で。
物権シリーズ
・用益物権いろいろ
・約定担保物権
・法定担保物権
・一物一権主義
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