2013年7月29日月曜日

民事と刑事

司法書士の岡川です。

私法と公法」の話とも関係するのですが、何かトラブルに遭った場合、それに対する法的措置としては、しばしば「民事」か「刑事」かということが問題になります。

民事というのは、私法上の法律関係についての事項、つまりは、私人間(※「わたし、にんげん」ではなく「しじんかん」)の問題をいいます。
紛争解決の手段としての民事手続には、民事訴訟を始めとして、調停や家事審判、労働審判、ADR、任意交渉等様々なものがありますが、いずれも当事者同士の問題について決着を付ける手続きです。
大部分は金銭的に解決をすることになるのですが、謝罪させたり物を引渡したりといった解決もあります。

他方、刑事とは、刑法上の問題、要するに犯罪に関することです。
相手の行為が犯罪になるかならないか、処罰されるかされないかの問題です。
刑事の問題とすると、その手続きは刑事訴訟を中心とする刑事手続であり、その最終的な結論(相手が有罪か無罪か)に関して、被害者は当事者ではありません。

あるトラブルについて、民事上の問題しか生じない場合は多々あります。
たとえ何らかの損害が発生していたも、相手の行為が犯罪ではなければ刑事の問題にはなりませんので、その場合は専ら民事上の措置を講じることになります。

そしてもちろん、民事上の問題も刑事上の問題もある場合もあります。
その時は、「どういう解決を望むか」で対処の方法が異なります。
例えば、「預けていた金を着服されたので返してほしい」なら民事の問題として対処しないといけないし、「横領罪として処罰してもらいたい」なら刑事の問題として対処しなければいけません。
あるいは、その両方を望むなら、両方の対処が必要になります。

多くの場合、「訴えてやる」というのは、民事のことを念頭においているように思います。
この場合の「訴える」は、民事訴訟の原告として、相手に対して訴えを提起することを言います。

他方、「○○罪で訴えたい」というのであれば、犯罪の訴えですので、刑事の問題です。
この場合の「訴える」は、警察や検察に対し、被害者として、「相手を犯罪者として起訴してくれ」と告訴するという意味になります。


このように、何か被害を受けたときに、「訴える」といったとき、民事の問題として訴える(=民事訴訟を提起する)のか、刑事の問題として訴える(=警察や検察に告訴する)のか、どちらをしたいと思っているのかを意識してみると、自分が今何をすべきか、が明らかになってくると思います(詳しくは、「『訴える』ということの意味」)。

では、今日はこの辺で。

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