2013年8月3日土曜日

社団法人と財団法人

司法書士の岡川です。

法人の分類はいろいろあります。
前回は、「公法人」と「私法人」という分類方法を紹介しました。
今回は、「社団法人」と「財団法人」について。

法人は、自然人以外のものが権利義務の主体となる地位(法人格)を付与された存在です。
この、法人格を付与される「自然人以外のもの」には、2種類存在します。
それが、「社団」と「財団」です。

「社団」とは、「人の集まり」で、「財団」とは、「財産の集まり」をいいます。
ちなみに、社団と財団を合わせて、「何らかの集合体」のことを「団体」というのですが、一般的には、団体=社団(人の集まり)の意味で使われます。

この「社団」のうち法人格を付与されたのが「社団法人」で、「財団」のうち法人格を付与されたのが「財団法人」です。

この区別は講学上の概念であって、上記の定義に当てはまる法人が「社団法人」とか「財団法人」という種類の法人として実定法上定義されているわけではありません。
例えば、大阪司法書士会というのは、大阪に事務所を置く司法書士(←「人」です)の集まりですので、講学上の概念として「社団法人」ですが、司法書士会は司法書士法に規定された「司法書士会」という種類の法人です。
株式会社とか特定非営利活動法人とか司法書士法人とかも、それぞれが法人の種類ですが、いずれも構成員(株式会社なら「株主」のように、構成員は皆「人」です)の集まりなので、講学上の分類としては「社団法人」になります。

社団法人は人の集まりなので比較的イメージしやすいかもしれません。
社団法人の構成員を「社員」といいます。
日常用語で「社員」というと、会社勤めのサラリーマンを想像しがちですが、それは「会社員の略」であって、法律用語でいうところの「社員」ではありません。
あなたが株式会社に勤めているとしても、あなたはその株式会社の「社員」ではないかもしれません。

株式会社の構成員(社員)のことは、特に「株主」といいます。
株主とは、「株式会社の構成員」であって、単なる株券の持ち主ではないのです。
つまり、あなたがその会社の株主であれば、その会社の「社員」(法律用語)だということになります。

株式会社では株主総会があるように、社団法人には、社員総会等、構成員が何らかの形で意思決定する機関があります。
社団法人を実際に運営する理事等の役員は、社員総会等によって構成員が選ぶことになります。


これに対し、財団法人というのは、すこしイメージし難いかもしれませんが、誰か(1人とは限らない)が一定の目的のために、一定の財産(金銭に限らない)を拠出して作ります。
この拠出された財産は、出資者の個人財産から分離され、財産の集合体それ自体が「財団」であり、これに法人格を付与されると「財団法人」です。

もちろん、財産の集合体に人格があるといっても、それだけでは何の意味もない(札束が自ら何かの契約書にサインしたりするわけがない)ので、それを運用するために理事等の役員が選任されます。
日本では、一般財団法人や公益財団法人のほか、学校法人や宗教法人、社会福祉法人、更生保護法人等が講学上の財団法人といえます。
これらの財団法人は、人の構成員が存在せず、ただ、法人の資産があり、それを運用する理事等の役員が存在しているだけです。
では、理事等の役員は誰が選ぶのかというと、その選び方は定款で定めることになります。
多くは、理事や監事とは独立した「評議員会」といった機関が設置され、評議員会で選任されたりします(法律の規定により、評議員会が必置とされる法人もあります)。

ちなみに、医療法人には、社団法人(社団たる医療法人)と財団法人(財団たる医療法人)の両方があります。
珍しい立法例ですね。


ところで、現在「社団法人○○」とか「財団法人○○」と名乗っている法人もあります。

これについては、また次回。

では、今日はこの辺で。

「法人」シリーズ
法人入門
公法人と私法人

続きはこちら→続・社団法人と財団法人

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