2013年8月6日火曜日

車にはねられた人を放置する行為

司法書士の岡川です。

世間は、すっかり夏休みですね。
交通事故も多発する時期ですが、交通事故に遭遇したときの対応も大切です。

はねられ重体の中3遺棄容疑 仲間の2少年逮捕 相模原(産経新聞)
トラックにはねられ意識不明となった中学3年の男子生徒(15)を放置したとして、神奈川県警相模原署は5日、遺棄容疑で、いずれも相模原市中央区の会社員の少年(16)と高校1年の少年(15)を逮捕した。同署によると、3人は遊び仲間。無免許運転が発覚するのを恐れ、放置したとみられる。

3人でバイクを無免許運転していたら、そのうちの1人がトラックにはねられて重症。
その後、残りの2人がわざわざ中学校のプール脇まで運んで行って、そこに放置した、と。

えげつないことしますね。

親が自分の子供を放置して死なせたりした場合、保護責任者遺棄致死罪(刑法218条)で逮捕されたというニュースは時々見かけますが、保護責任者遺棄ではなく、単純遺棄罪(刑法217条)で逮捕というニュースは、珍しいように思います。

保護責任者遺棄罪が、親や保育士、交通事故の加害者のように、対象者を保護する義務を負う「保護責任者」について成立する犯罪であるのに対し、単純遺棄罪は、保護義務を負わない人について成立する犯罪です。
しかも、単純遺棄罪は、助けを必要とする人(要扶助者)をただ単にその場に放置しただけで成立する犯罪ではなく、要扶助者を移動させることで危険を生じさせた場合に成立します。

つまり、助けを必要とする人がいた場合に、その人を保護する法的責任を負っていない人が、わざわざその人を危険な場所(他者の助けが及ばないような場所)まで運んでいくと成立するわけです。
今回の少年ら(逮捕された2人)も、事故の加害者ではありませんので、法的には保護義務を負っていません。
なので、事故現場に放置して帰っても罪に問われることはありません(倫理的にはどうかと思いますが)。
しかし、わざわざ中学校のプール脇に運んだことで、遺棄罪が成立することになるわけです。

保護責任者であろうがなかろうが、交通事故を目撃したら、まずは通報。
そのまますぐ病院に連れていければ良いのですが、無理して運ぶよりは、救急車を呼んで応急措置をしておいた方がいいかもしれませんね。

刑法的には、実は、放置するより「けが人を病院以外のところに運ぶ」という行為の方が悪質です。
ましてや、人目に付かないところに連れていくのは最悪です。

覚えておきましょう。
まあ、常識的な行動をしてれば間違いないんですけどね。

では、今日はこの辺で。

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