2013年10月19日土曜日

特撮ヒーロー俳優が会社法違反で警察沙汰に?

司法書士の岡川です。

特撮ヒーロー俳優の齋藤ヤスカさんという方のブログが最近炎上気味です。
有名人が不用意な発言をすると火消がたいへんだなぁ・・・と遠目に観察していましたが、正直あんまり興味はないので放置していました。
だって、齋藤さんってどなたか存じ上げないですし・・・。


そもそもの発端は、どうやらお父様が遭難したとかで、その捜索費用の募金を呼び掛けたところ、警察から注意されたことらしいですね。

で、その齋藤さんがまた燃料投下・・・というより、元からこっそり仕込んであった火薬に火がついてしまったようで、今度はツイッターのほうに批判がでています。
いや本当、有名人は言動に気をつけないと大変です。
ただ、こちらは、少し法律が絡んでくるので、首を突っ込んでみます。


募金乞食俳優・斎藤ヤスカが株式会社Endear社長として詐称し登記すらしていなかったことが発覚!会社法違反で警察沙汰へ(ハムスター速報)

要するに、「株式会社エンディア代表取締役」という架空の肩書をツイッターのプロフィールに記載していたという話です。
「株式会社エンディア」という会社は(少なくとも、その時点では)存在しないらしい。

株式会社と株式会社でないものの区別は、以前こちらの記事で書きましたが、株式会社として登記された団体が株式会社で、それ以外は株式会社ではありません。

そして、エンディアという団体(が存在するかどうか知りませんけど)は、株式会社の登記がされていないのであれば、絶対に株式会社ではありません。

そして、株式会社でないものが株式会社を名乗ることは会社法で禁じられています。
第7条
会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
エンディアという団体が実際にあって、その団体が「株式会社」と名乗って活動していたのであれば、会社法違反ですね。


さて、前掲ブログ(ハム速)にもあるとおり、会社法7条違反には、「100万円以下の過料」という制裁が規定されています(会社法978条)。

それ自体は正しいのですが、そのあとが間違いです。
こういう外部サイトのコメントが引用されています。
会社法違反は民事ではないので警察(検察)の管轄です。
警察または検察に告発(刑事訴訟法239条1項)します。
文書を提出か、口頭で申し立てる事になりますが、口頭の場合は調書が作成されます。(刑事訴訟法241条1項)

民事ではないので警察・・・というのは、誤りです。
というのも、過料は行政上の制裁であり、本件は刑事事件ではないからです。

「刑事」というのは、刑法等の刑罰法規の適用を受ける事柄、簡単にいえば犯罪に関することをいいます(参照→「民事と刑事」)。
そして、過料は「行政罰」であって、刑法に規定される「刑事罰」ではありません。
つまり過料事件は、民事事件でも刑事事件でもなく、行政事件です。

したがって、刑事訴訟法の適用はありませんし、警察沙汰になることもありません。
警察や検察に告発したところで、門前払いされます。

じゃあ、「どこ沙汰になるんよ?」といえば、基本的に法務局と裁判所沙汰になります。
会社法違反の過料事件は、非訟事件手続法に基づき、裁判所管轄の事件です。
過料自体は行政処分なのですけど、事件としては裁判所管轄なんです(執行は検察が行います)。


実際に過料に処されるかどうかはわかりませんが、少なくとも齋藤さんは「犯罪」(刑法違反)を行ったわけではないし、警察に逮捕されることもないということで、齋藤さんファンのみなさんご安心ください。

ま、過料も違法行為に対する制裁であることには変わりないのですけどね。

では、今日はこの辺で。

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