2014年1月16日木曜日

推定と擬制

司法書士の岡川です。

毒物と毒薬の違い」というのは少しマニアックな話でしたが、日常用語として同じように使われていても、法律用語としてはきちんと区別されて使われる用語、というのはたくさんあります。

そのひとつが、「推定する」というのと「みなす」というものです。

両者は、日常用語としても、ニュアンスの違いがあるかもしれませんが、その違いを認識して使い分けることはできますか?


法律の条文において、「推定する」とあれば、それは、「一応そうだということにするが、『そうじゃない』という証明があったら覆る」ことを意味します。

例えば、民法772条は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」と規定しています。

妻が懐胎した子は妻の子であることは間違いない(代理母という特殊な事例はひとまず除外)ので、夫の子と推定されるということは、すなわち夫婦の子=嫡出子だと推定されることになります。
これが、いわゆる嫡出推定というものです。

実際に夫の子であったら、推定されようがされまいが結論は変わらないのですが、実際に夫の子でないという場合もありますね。
その場合も、「夫の子と推定する」とされる以上は、とりあえずは、夫の子として出生届は受理されますし、適法に戸籍に載ります。
ただし、「そうじゃない」という証明によって覆すことができます。
これを嫡出否認といいます(民法774条)。


他方で、「みなす」と書いてあったら、「実際のところどうなのかにかかわらず、そういうことにする」という意味です。
「反証を許さない」のが「みなす」という文言の意味です。

「みなす」ことを「擬制」といいます。

例えば、民法886条は「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」と規定しています。

胎児ってのは、生まれてないから胎児なわけですが、この規定によって、「法律上は既に生まれているものとして扱う」ということになります。
これは「推定」ではなく「擬制」なので、反証を許しません。
つまり、いくら「生まれてない」ことを証明しようが、結論を覆すことはできないわけです。


どちらも同じように、「どっちかわからない場合」に結論を与える文言ですが、反証を許すか許さないかという違いがありますので、しっかりと区別して使いましょう。


あ、ちなみに、例の元・光GENJIのあの人のあの事件は、そもそも「婚姻中に懐胎した子」じゃないということで、嫡出推定を受けておらず、したがって嫡出否認ではなくて、親子関係不存在確認という争いになっている…とかそういう話らしいですが、あまり興味がないのでその辺は詳しく把握していません。

では、今日はこの辺で。

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