2014年4月23日水曜日

仮差押

司法書士の岡川です。

前回、「差押え」について書きました。
物や権利の処分を制限する「差押え」をするには、その前にまず、判決などの「裁判所のお墨付き」(債務名義)を取得する必要があります。
差押えをしようとしている人が、本当に債権を有しているということを確定するためです。

しかし、「金を貸したことは確実で証拠もある」「それなのに金を返してくれない」「今なら相手の財産を把握できている」というような場合、一刻も早く債務者の財産を確保しておきたいものです。
放っておいたら、使われたり隠されたりするかもしれませんし、そうなれば債権を回収することが困難になります。

そこで、こういう場合に金銭債権を保全するために、暫定的に債務者の物や権利を確保する方法があります。
これを「仮差押」といいます。

仮差押の段階では、本差押と違って、競売にかけて売ってしまうことはできません(あくまでも「仮」なので)が、とりあえず債務者の処分を禁止することができるので、その間に訴訟を提起してじっくりと判決を取りにいけばよいのです。


そんな便利な制度ですが、そう簡単に使えるものではありません。

仮差押をするには、ある程度確からしいと判断できる証拠を裁判所に提出しなければなりません。
全く何の証拠もなしに、「あいつの財産を確保してほしい」といっても通らないということです。
まあこれについては、何とかなることも多いでしょう。

それよりも問題は、担保が必要だということです。

またまだ最終的な判断が出ていない段階で他人の財産の処分を禁止するわけですから、相手に損害を与える可能性もあります。
仮差押をしたはいいが、後に判決で債権が認められなかったりすれば、「ごめんなさい」では済まないこともあります。
その場合は、相手に対し、逆に損害を賠償しなければなりません。

そのため、仮差押をするには、裁判所から担保を立てるよう求められるのが一般的です。
事案にもよりますが、仮差押対象財産の2~3割程度を納める必要があります。
つまり、100万円の預金債権を仮差押しようと思えば、20~30万円くらい用意しないといけないわけですね。

そのため、仮差押というのは、便利な制度ではあるものの、それほど頻繁に利用されるものではありません。

もちろん、事案によっては、担保を立ててでも、速やかに財産を押さえておく必要がある場合もありますので、「そういう制度もある」ということは頭に入れておくとよいでしょう。

では、今日はこの辺で。

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