刑法の教科書なんかでも出てくる事例なのですが、自分の口座に誤って振り込まれた金を(間違いであるとわかっていながら)引き出すとどうなるでしょうか?
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誤振り込みの金引き出す、詐欺容疑で女逮捕へ
女は誤って振り込まれた現金と知りながら、銀行の支店でおよそ2700万円を引き出し、だまし取った疑いが持たれています。
答え:捕まります。
誤振込みされたものであっても、自分の口座に入っている以上、口座名義人は銀行との間では預金債権を取得します。
口座に入っているお金は、払い戻しには応じるというのが銀行との預金契約だからです。
とはいえ、正当な理由のないお金なので、返せと言われたら返さなければならないもの(不当利得)であり、誤振込みをした人からの申し出があれば、振り込んだ金額を、口座名義人が引き出す前に元に戻すことも可能(「組戻し」といいます)です。
つまり、口座名義人から払い戻しを求められたら払い戻さざるを得ないけども、払い戻さないでいてくれた方が(かつ、「誤振込みですよ」と教えてもらったほうが)、銀行としては後の処理も円滑に可能だし、紛争を回避することができるので、ありがたいわけです。
そこで、間違いであることがわかっているのであれば、銀行に「間違ってますよ。組戻ししてあげてください」と告げるべき信義則上の義務が生じるとされます。
ましてや、しれっと引き出すことは許されないということになります。
そうすると、告知義務に反して、誤振込み(組戻しすべきもの)と分かっていながら、何も告げずに金を引き出すことは、銀行を騙す行為(「誤振込みではない」と誤解させる行為)と評価されて「銀行に対する詐欺罪」が成立することになります。
もし、銀行員を騙すのではなく、ATMからキャッシュカードで引き出したら、窃盗罪になります。
そもそも、こういう細かい法律構成を考えなくても、間違って自分の手元に入った財産が自分のものにならないことは、常識的にわかるはずです。
友人が自分の家に財布を置き忘れていったからといって、財布の中身が自分のお金になるわけがありません。
「勝手に振り込んでおきながら、詐欺ってのは酷くないか?」という感想を持った方もいるかもしれませんが、これは、上記の通り「銀行に対する詐欺」なのです。
(間違って)勝手に振り込んだカード会社に対する詐欺ではありません。
ちなみに、誤振込みではなく、「意図的に」勝手に振り込んで、高金利で返還請求してくる「押し貸し」というヤミ金の手法もありますので、どっちにしても、身に覚えのない振込みには手を付けず、きちんと銀行に告げた方が色んな意味で身のためです。
加害者にも被害者にもならないよう気を付けましょう。
では、今日はこの辺で。
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