民法等の私法関係における基本的な概念として、「法律行為」というものがあります。
法律行為とは、意思表示を主たる要素とする私法上の法律要件のことをいいます。
法律要件とは、一定の法律効果を発生させる事実をいいます。
つまり、意思表示を要素として、一定の法律効果を発生させる事実が法律行為です。
伝統的に、法律行為は大きく分けて3種類に分類されます。
まず、一番わかり易いのが契約(双方行為)ですね。
契約は、売主と買主、賃貸人と賃借人のような、複数の相対立する当事者の意思の合致によって成立する法律行為です。
意思の合致が要件なので、買主が一方的に「これを買いたい」と思って「売ってくれ」と意思表示(申し込み)をしても、売主が「売ってやろう」と意思表示(承諾)をしなければ、成立しません。
それから、当事者が1人でもできる法律行為があり、これを「単独行為」といいます。
単独行為の代表的なものは遺言ですね。
遺言は、一方的に遺言書に書いておけば、(それが適法である限り)それだけで成立する法律行為です。
遺言により財産を取得する者(受贈者)は、放棄するかどうかを決めることはできますが、遺言の成否自体は、遺言者の意思のみにかかっています。
あるいは、一定の要件を満たした場合に、解除や取消しをする場合、これも単独行為になるので、一方的な意思表示によって効果を生じさせることができます。
あまり馴染みがないのが、3つめの類型「合同行為」です。
これは、契約と同じく、複数の意思表示が要素となるのですが、契約と違って、相対立する意思表示(「売る」⇔「買う」のようなもの)ではなく、意思表示が同じ方向を向いているものをいいます。
具体的には、法人の設立行為のようなものです。
これに対し、意思表示を要素としない行為を事実行為といいます。
「事実行為」といった場合、法律効果を生じさせるものを指す場合もあれば、そうでないものを含めていう場合もあるようです。
法律行為と事実行為の違いは、例えば、成年後見人の職務範囲などに関わってきます。
成年後見人は、判断能力の低下した被後見人の代わりに法律行為を行うことをその職務としています。
したがって、直接的な介護とか医療行為などの事実行為(これらは法律効果を発生させない行為です)は、後見人の職務の範囲外であるとされます。
これに対し、実際に介護をするヘルパーとの契約などは、後見人の職務となります。
では、今日はこの辺で。
→「法律行為入門」も参照
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