2014年6月16日月曜日

株式会社の役員

司法書士の岡川です。

株式会社には、会社の構成員(社員)である「株主」のほか、会社の経営に携わる「役員」が存在します。
「役員」は、いくつかの法律によって別々の定義がなされているため、微妙にその範囲が異なるのですが、取締役や監査役などが役員です。

株主と役員は同一人でも構いません(し、実際に多くの中小零細企業でそうなっています)が、理念的には、株主と役員は別々であることが想定されています(「所有と経営の分離」)。
また、現行会社法の施行により、会社の機関構成がかなり自由になったため、会社にどのような種類の役員がいるかは、会社ごとに異なります。

具体的な役員の種類は次のようなものです。


1.取締役

取締役は、株式会社に必ず置かれる役員です。
会社の経営方針について意思決定を行ったり、業務執行の中心的な役割を担っています。

取締役が3人以上いる場合、定款で取締役会を設置することも可能ですが、取締役会設置会社においては、取締役は取締役会の構成員になります。
かつては、株式会社には取締役会が必置機関(したがって、取締役も最低3人必要)でしたが、現行の会社法の規定では、取締役会を設置するかしないかは自由となっており、少なくとも取締役が1人いればそれで足ります。

2.監査役

監査役は、取締役等の職務執行を監督する役員です。
株式会社では、取締役がアクセルで、監査役がブレーキの役割を果たします。

かつての法律(商法)では、株式会社を作るには、取締役会(3名以上の取締役)と監査役が必置機関でした。
そのため、かつての中小企業においては、夫婦と誰かもう一人(例えば父親)を取締役にして取締役会を構成し、さらに誰か適当な人(例えば母親)を監査役に置いておく、というふうに、名ばかり監査役が大量に存在しました。

監査役制度があまりにも形骸化している上に、実際問題としても小規模な会社で監査役を置くというのは現実的でないため、監査役も必置機関ではなくなりました。

ただし、取締役会を設置する場合等、必ず監査役を置かなければならない機関構成も存在しますので注意しましょう。

3.会計参与

聞き慣れないかもしれませんが、現行会社法では、会計参与という役員が存在します。
現行会社法では、小規模な株式会社の実態に即して、監査役を置かなくてもよくなりました。
そうなると、法律上の監督機関が存在しなくなり、計算書類の適正が担保されなくなります(まあ、もともと名ばかり監査役がその役割を果たしていたかというと、全くそうでもないのですが…)。

その穴を埋めるため、取締役と共同して計算書類を作成する会計参与という役員が新設されました。

この会計参与は、公認会計士か税理士でなければなりません。
すなわち、従来から中小企業の会計や税務の顧問として外から経営に関与してきた会計の専門家を、役員として会社組織の中に組み込む制度です。

まだまだ一般的な制度ではありませんが、会計参与を設置すれば、取締役会設置会社であっても監査役を設置しなくてもよくなるなど、メリットも存在します。

4.執行役

「委員会設置会社」という、特に大規模な会社(ソニーなど。みずほFGも近々委員会設置会社に移行予定)において採用されている機関構成の会社においては、業務執行を行うのは、取締役ではなく執行役という機関になります(取締役は、取締役会の構成員として意思決定を行う機関)。
この執行役は、会社法では役員とはされていませんが、会社法施行規則や独占禁止法、金融商品取引法などにおいては、役員の定義に含まれます。

5.支配人

支配人とは、本店や支店で事業に関する包括的な代理権を付与された人をいいます。
会社組織における地位としては、代理権を付与されている使用人(=雇われる側の人間)なので、会社法や会社法施行規則等では役員とはされていませんが、独占禁止法上は役員に含められています。


ざっと概観しただけですが長くなったので、ここらで切りましょう。

では、今日はこの辺で。


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