2014年7月29日火曜日

「サイコパス」とは何か(アニメは関係ありません)

司法書士の岡川です。

佐世保の同級生殺害事件、ケンカか何かの突発的な事件かと思いきや、何やら異常な犯行動機が報道されるようになってきましたね。
何か隠しているのかもしれないし、必ずしも供述をそのまま信用できるわけではありませんが、過去にも色々問題行動があったみたいなので、それなりに真実に近いのかもしれません。

精神的な異常性が報道されると、すぐ「心神喪失で無罪になる可能性」という話が出てきます。
そして、最近では「サイコパス」という単語もよく目にするようになりました。
特にネット上で。

「サイコパス」という言葉は、例の遠隔操作ウイルス事件で片山被告が口にしたことで広く知れ渡るようになりましたが、これは昔からある言葉です(というかむしろ、昔のほうが一般的に使われていた用語)。

ただ、実はサイコパスであることと心神喪失で無罪というのは、あまり関係ありません。
むしろ、サイコパスなら刑事責任能力が認められる可能性が高い。


サイコパス(psychopath)とは、日本語で「精神病質者」といいます。
つまり「精神病質」を有している人のことです。

精神病質とは、精神障害の一種ですが、その定義は様々です。
日本では、ドイツのクルト・シュナイダーという医師による「異常性格者のうち、自らがその異常性に悩むか、社会がその異常性に悩まされる者」という定義が一般的に用いられています。
つまり、「精神病質」は「異常性格」に含まれる概念であって、「精神病」とはカテゴリからして異なることになります。

他にも、「正常と精神病の中間状態」という定義付けがなされることもありますが、この定義にしたがえば、精神病との違いは量的なものであって質的な違いはないことになります。

いずれにせよ、サイコパス(=精神病質)とは、性格の異常性・人格の病的な状態を示す場合をいうのであって、「(狭義の)精神病」とは異なる概念です。
つまり、本当に「サイコパス=精神病質者」であるなら、逆にいえば重度の精神障害・精神疾患(精神病)を有しているわけではないことを意味します。
これを「病気」というかは、「病気」の定義によるようです(少なくとも、「精神障害」には含められています)。

そして、精神病質者は、その人格の異常性により犯罪に親和性が高いとされていますが、必ずしも弁識能力を欠くというものではありません。
そのため、原則として完全責任能力が認められる(心神喪失とは認められない)のです。
場合によっては、心神耗弱が認められることはあります。


ちなみに現在では、「精神病質」という用語は、法律用語としては残っていますが、精神医学用語としてはあまり用いられていないようで、「反社会性パーソナリティ障害」というのがほぼ同じものを指しています。
もっとも、「精神病質」というのがそもそも定義や診断基準が明確でなかったので完全に一致しているわけではないようですが。


「自分はサイコパス」というのは、罰を免れる理由にはなりませんので注意しましょう。

では、今日はこの辺で。


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