夫婦であっても親子であっても、契約を締結することは可能です。
ただし民法では、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と規定されています(754条)。
つまり、夫婦間であっても契約は有効に成立するけれど、一方的に取り消す(無効にする)ことが可能なのです。
夫婦のことは夫婦に任せておこうや・・・とかまあ、そんな感じの趣旨の規定なわけですが、契約とは、要するに法的な(法律の規律に服する)約束のことなので、つまり「夫婦の約束は破っていい」ということですね(法的には)。
仮に夫婦間の贈与契約が履行されなかったとして妻が夫を訴えたとしても、夫は取消権を行使するだけで請求を退けることができるわけです。
もちろん、「法律上強制できない」というだけの話なので、倫理的・道義的に許されるかどうかというのはまた別問題です。
それに、この規定も制限的に解釈されており、たとえ夫婦間であったとしても、既に婚姻関係が破綻しているような場合は、取消権を行使することはできません。
まだ正式に離婚していなくても、婚姻関係が破綻している場面では、当事者の契約関係は、夫婦だけに任せてよい問題ではないということです。
ところで、これとはまた別の話で、「夫婦財産契約」という契約があります。
これは、ほとんど使われていない特殊な契約なのですが、法定財産制と異なる夫婦財産制を定める契約をいいます。
この契約を締結することで、婚姻費用の分担とか、日常家事債務の連帯責任とか、財産の帰属に関して、その夫婦だけは法律上の規定と異なったルールにすることができるのです。
ある程度自由に夫婦の財産に関するルールを設定することが可能なのですが、いろいろと制度上の制約もあります。
まず、婚姻届を提出する(正式な結婚をする)前に契約を締結し、かつそれを登記しなければ第三者に対抗(主張)することができません。
しかも、原則として一度締結した契約内容を変更することはできません。
登記が必要なので、契約件数は登記の件数で把握することが可能なのですが、ここ数年は毎年10件くらいしか登記がありません。
まあ、それ以前は、毎年5件くらいだったので、どうやら最近見直されているのかもしれません。
「色々な夫婦のカタチ」といった考え方に基づいているのでしょうか。
外国では夫婦財産契約を締結することが一般的な法制もあるので、国際化の流れも影響している可能性も考えられます。
そうはいっても、まだ年間10件ですが。
もしかしたら、これからもっと使われることになるかもしれませんね。
では、今日はこの辺で。
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後見人登記は昭和60年以降で1件だけですからね。アパートオーナーの人とかもっといるでしょうけど。
返信削除>みうらさん
返信削除いわれてみれば、後見人登記とか未成年者登記とか、試験勉強のときしか聞きませんね。
最新の統計を調べてみると、ここ10年で3件あるみたいですよ(でも3件・・・)。
後見人の職務を考えれば、後見人登記が必要な場面などまずないですから当然ではあります。実務上、後見人が就任後に営業を行うことは予定されていませんし。
アパートのオーナーである(収益物件を持っている)というだけでは営業を行ったことにはなりませんので、後見人登記をする必要がないのです。
過去10年で新規登記は平成23年の1件がありました。平成16と18に変更等が各1件です。統計年報。
返信削除賃貸借は絶対的商行為ですから後見人登記は必要になります。空き室のままなら必要ないですけど。
>みうらさん
返信削除なるほど、変更等を含めて3件ですか。
なお、賃貸借は絶対的商行為ではありません。
(営業的商行為)
返信削除第五百二条 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
継続してすれば商行為です。
http://blog.goo.ne.jp/1234567xxxxxxx
削除わたしのです。
>みうらさん
返信削除営業的商行為は絶対的商行為ではありません。
賃貸を営業として行うには、商法上は登記をすべきことになります。
アパートというと、後見人の就任期間中ずっと同じ人が住んでいて賃料収入を管理するだけの場面を考えていましたが、よく考えれば、入居者の入れ替わりが多い物件をだったりすると、後見人の就任期間中にも賃貸契約をする場面というのはありそうですね。
ただ、登記する実益も登記しないことの不利益も何もないから、誰も登記しないのでしょう。