2014年8月19日火曜日

法律行為入門その4(効果帰属要件・効力発生要件・対抗要件)

司法書士の岡川です。

前々回と前回で、法律行為の成立要件と有効要件の話をしました。
基本的には、この2つの要件を満たせば「有効に成立した」ということになるのですが、権利を主張する場合、それだけでは足りない場合があります。

例えば、「代理」という場面。
「代理」というのは、簡単にいうと、自分の代わりに第三者に何らかの行為をしてもらうことです。
このとき、代わりに行為をするのが「代理人」です。

代理行為の効果は、特に何の問題もなければ、直接本人に帰属します。
これは例えば、売買契約の場面で、買主を代理して代理人が契約を締結したとしても、買った物の所有権は代理人に帰属するのではなく本人に帰属する、という意味です。

ただ、「代わりに契約を締結した人」が代理権を持っていなかった(正式な代理人ではなかった)としたら、本人に効果は帰属しません。
このように、本人に法律行為の効果が帰属するための要件を効果帰属要件といいます。

効果帰属要件を満たさない法律行為(代理行為)は、「有効に成立している」のに「効果不帰属」という宙ぶらりんの状態になります。


次に、法律行為に条件や期限が付されていた場合。

例えば、売買契約に「代金を支払ったときに所有権が移転する」という条件や、「何年何月何日に所有権を移転する」という期限が付されていれば、たとえ売買契約が「有効に成立した」としても、その条件が成就したり期限が到来した時でなければ、「所有権移転」の効力が発生しません。
これを、「効力発生要件」といいます。


それから、「対抗要件」というのもあります。
これは法律の初学者には解り難い概念ですが、「対抗」とは、要するに「相手に主張する」という意味です。

例えば、ある土地について、AさんとBさんがともに「この土地は自分が買ったものだ」と主張しているとします。
しかも、実際に、悪徳不動産業者がAさんとBさんの両方と売買契約を締結していたという場合(「二重譲渡」といいます)、どっちの主張が通るでしょうか。

これを決めるのが「対抗要件」です。
すなわち、対抗要件を具備した人が、相手に対して自分の権利を主張することができるのです。

そして、土地の所有権の場合、対抗要件は「登記」です。
したがって、「AさんとBさんのどちらが自分名義に登記をしているか」によって、「どちらが権利を主張できるか」が決まってきます。
もし、Aさんのほうが先に売買契約をしていたとしても、Bさんが自分に所有権移転登記をしてしまえば、Bさんが正当な権利者として自分の権利を主張することができます(Bさんが対抗要件を具備しているため)。
Aさんは、「登記をしてなかった(対抗要件を具備しなかった)のが悪い」とされるのです。


登記って大事ですね、というお話。


では、今日はこの辺で。

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法律行為入門シリーズ
法律行為入門
法律行為入門その2(成立要件)
法律行為入門その3(有効要件)
・法律行為入門その4(効果帰属要件・効力発生要件・対抗要件) ← いまここ
(こちらも参考)
法律行為について
「準法律行為」について

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