2014年10月17日金曜日

ことばの意味を大切に

司法書士の岡川です。

法律を学んだり、法律実務に携わる場合、「ことば」にこだわらなければなりません。
自然科学の分野と違い、法律というのは、人が「ことば」によって作り出したものであり、「ことば」によって運用されるものです。
自然科学の実験をするのに、数値がどんぶり勘定ではいけないように、法律を扱うのにひとつひとつの「ことば」を蔑ろにすることはできません。

一文字でも違えば全く意味が変わってくることもあります(例えば、「役員」と「役員等」では、そこに含まれる対象が違います)。
同音異義語もたくさんあります(例えば、「ほさにん」には、「補佐人」と「保佐人」があり、両者はまったく別)。
また、同じ単語でも、法律によって意味が違うこともあります。
例えば、会社法でいう「役員」と独占禁止法でいう「役員」では、そこに含まれる対象が違います(詳しくは「株式会社の役員」参照)。


法律の条文に出てくる単語が実際に何を指すのかわからなければ、それを現実の事件に当てはめることはできませんし、誰かと議論をする際も、定義をしっかりと確定させて相手と共有しておかなければ、まともな議論になりません。

法律をある程度学んだ人同士では、それなりに共通認識が出来上がっているものですが、例えば、一般の方と話をする場合(あるいは、このブログに書く場合も含まれるかもしれません)、やはり「ことば」を選ばなければいけません。


ところで、いわゆる「法律用語」の中にも、それが「日常用語として存在しないもの」もあれば、「日常用語としても存在するが、辞書的な意味とは異なる意味をもつもの」も存在します。

「社員」なんかは、後者の例でしょう。
会社勤めをしているサラリーマンの方は、その会社の「社員」だと思っているでしょうが、法律上は、おそらく「社員」ではありません。
逆に、私は会社勤めをしていませんが、複数の法人の社員です。
(「社員」の意味については、「社団法人と財団法人」を参照)


法律というのは、人が社会生活をおくる以上、望むと望まざるとに拘らず、必ず何かしら関わってくるものなので、「法律用語は専門家だけが知っていればよい」というものでもありません
「専門家はわざと難しい法律用語を使っている」という批判はあるでしょうが、用語が難解になるのは、「定義を厳密にしなければならない」という要請から、ある程度仕方ないことでもあるのです。


では、今日はこの辺で。


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