2014年10月28日火曜日

特別受益の話

司法書士の岡川です。

遺産分割は、基本的には、被相続人の死亡時の財産(相続財産)を相続分に応じて分割するものです。
例えば、死亡したときに1000万円残っていて、相続人が2人の子(AとB)だとすれば、500万円ずつ相続するというのが原則です。

しかし、被相続人が死ぬ前に、相続人のうちの1人(A)に対して、家とか車を買う資金とか生活費とかで何やかんやと既に1000万円くらい贈与していたとすれば、この場合にもAとBに遺産を500万円ずつ分配すると、どうも不公平な感じもします。
あるいは、2000万円残っていたとしても、「1000万円をAに遺贈する」という遺言が残されていた場合、Aにまず1000万円遺贈し、その残りを500万円ずつ法定相続分で分けるというのもおかしな話です。

こういった場合に、相続人間の利益を調整する制度として「特別受益」というものがあります。

特別受益とは、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす」という制度です。

死亡時の財産に生前に贈与した分も合算した総額を相続財産として、各共同相続人の相続分を計算するというわけです。
これを「持戻し」といいます。

上記の例(生前に贈与していた例)の場合、生前に1000万円をAに贈与しているわけですが、死亡時に残っている1000万円と合算して2000万円を相続財産とみなし、これを法定相続分で分けた、1000万円ずつが各共同相続人の取り分ということになります。
ここで、Aは既に1000万円を受け取っていますので、結論的にはBが死亡時の1000万円を取得するということになります。

もしAが生前に受け取っていた特別受益が200万円だった場合は、1200万円が相続財産なので、各共同相続人の取り分は600万円。
Aは既に受け取った200万円を引いた400万円を取得し、Bは600万円を取得します。

逆に、Aが生前に3000万円くらい受け取っていたような場合、相続財産とみなされる総額が4000万になりますが、各共同相続人の相続分は2000万円ずつだからといって、AはBに1000万円返さなければいけないかというとそうでもなく、Bが死亡時に残った1000万円取得して終わりです。


こういう制度があるので、例えば被相続人とBの仲が悪くて、そもそもAに多めに財産を残したいという意図で生前に贈与していたとしても、特別受益の持戻しによって調整されることになります。

自動的に調整されるのを防ぐには、被相続人が遺言を書けばよいのです。
つまり、「生前に贈与した分はあるけど、それはそれとして、残った遺産は500万円ずつ分けなさい」という内容の遺言書があれば、遺言の内容が優先しますので、その通りになります。
これを「持戻しの免除」といいます。
ただし、この場合も他方の相続人の遺留分を侵害することはできません。


遺産分割というのは、色々な要素を考慮しないといけません。
ややこしいですね。

では、今日はこの辺で。

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