司法書士の岡川です。
会社(株式会社や持分会社)は、法人格を有する「法人」です。
会社が成立するということは、すなわち法人格を取得することを意味します。
では、会社はどうすれば「成立」するのでしょうか。
会社法では「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」(会社法49条)とされています。
なので、会社に法人格が付与される(会社が法人格を取得する)ためにとるべき手続は、「登記」の手続だということになります。
会社は、法律に則って、一定の手続が履行されたら、許可や認可等を必要とせずに法人格を取得することができます。
これを「準則主義」といいます。
法定の手続としては、まず会社の実体を形成するために、
1.定款の作成
2.株主の確定
3.出資の履行(会社財産の形成)
4.取締役等の機関の選任
を行います。
会社の実体が形成されたら、その後に設立登記をしますが、法定の手続が履行されていれば設立登記に必要な書類が揃いますし、逆に手続に不備があれば設立登記ができません。
準則主義の下で会社設立の要件が整っているかは、設立登記手続の中で登記官が審査することになっているのです。
ただし、登記官は、「法定の手続が履行されたか」という範囲を超えて、「こんな会社の設立を許すべきではない」といった実質的な判断に踏み込む権限は有していません。
今では誰でも簡単に会社を作ることができる(親の同意があれば小学生でも作れる)時代ですが、元々そういうものだったわけではありません。
株式会社という企業形態(あるいは、その起源となるような組織形態)が生まれたのは、大航海時代のヨーロッパに遡ります。
高校で世界史を学んだ人は、「イギリス東インド会社」とか「オランダ東インド会社」というのを聞いたことがあると思いますが、あのへんの会社が、世界で最初の株式会社と言われています。
「あのへん」とはっきりしないのは、何をもって「株式会社」というのかによって、どれが世界初になるのかが変わってくるからです。
その頃の会社が法人格を取得するには、基本的には国王の勅許や議会の特許が必要でした(こうして設立された会社を勅許会社とか特許会社といいます)。
当時は国策として会社が設立されていたことから、誰でも彼でも会社を作ることは認められませんでした。
という400年くらい前の歴史に思いをはせるのはこれくらいにして、身近な日本の話に戻しますと、かつての旧商法(明治23年商法)では、免許主義が取られていました。
すなわち、目論見書と仮定款を作成して発起人が署名捺印し、これを主務省に提出して認可を得なければ発起することができませんでした。
その頃は認可を得て初めて株主を募集することができたのです(旧商法159条)。
そして、認可が得られたのち、創立総会なども終われば、設立に際してさらに主務省の免許を申請し、免許が得られたら無事に会社設立となります。
これが明治23年ですから、130年くらい前の話です。
今の会社法の前身となったのが現行商法ですが、これは明治32年に制定され、この段階で免許主義は廃止され、一定のルールの下で自由に設立できるようになりました(準則主義)。
110年くらい前の話ですね。
明治32年に免許主義が廃止されて以来、現在の会社法に至るまで準則主義となっています。
準則主義では、設立の許可や認可を与えるための審査というものがありませんので、適法に会社が設立されているかを審査する唯一の制度が登記です。
現在の商業登記はかなり簡略化されて、会社設立も非常に簡単になりましたが、会社の実在は登記でのみ確認できるので極めて重要な制度なのです。
その辺をあまり意識せず、登記を軽く考えている人もいますが、それは大きな間違いです。
これは設立登記に限らず、設立後の変更登記(例えば、役員の任期が満了した時の役員変更登記)などでも同じことです。
登記懈怠には注意しましょう。
では、今日はこの辺で。
0 件のコメント:
コメントを投稿