2015年4月3日金曜日

法解釈の手法

司法書士の岡川です。

新学期が始まりました。

この春から法学部に入学して初めて法律を学ぶという人もたくさんいるでしょう。

法律を学ぶというのは、法律の条文を丸暗記することではありません。
司法書士や弁護士などの法律実務家も、法学部教授などの法学者も、基本的には条文を暗記したりはしません。

もちろん、よく見る条文などは、ある程度勝手に覚えることはありますが、あえて覚えようと思って覚えることはまずありません。


法律は、社会のルールですから、実際の事案にきちんと適用できなければ意味がありません。

条文に書かれた法律の内容は、抽象的であり、漠然としています。
その意味内容を確定する作業を「法解釈」といいます。

この法解釈について学ぶ学問が法解釈学であり、一般的に法律を学ぶといった場合、多くは法解釈学を学ぶことになります(法学には、法解釈学のほかにも色々なものがありますが、これは後日)。

さて、その法解釈ですが、色々な手法があります。

法解釈の手法を知らなければ、意味内容を確定するといっても何をどう考えればよいか迷うことになりますし、誤った(しばしば独善的な)解釈に陥ることになりかねません。
よくネット上で見かけるトンデモ法理論は、法解釈というものを理解していないことから生じていることがあります。

法律の世界へ足を踏み入れた皆さんは、法解釈の手法を理解することが重要です。


解釈の手法には、大きく分けて文理解釈と論理解釈があります。

文理解釈とは、条文の内容を、文言の通常の日本語の意味に従って解釈する方法をいいます。
つまり、書かれた文章から普通に読み取れるとおりに解釈することです。

条文に「馬」と書いてあれば、あの「馬」であって、白黒模様で「モ~」と鳴く動物は含みません。

常識ですね。

このように、常識的に読み取れる「そのままの意味」で理解するのが文理解釈です。
文理解釈は、ある程度の常識と日本語の知識のある人であれば難しくないでしょう。


しかし、常に文理解釈をしていれば全て解決すればよいのかというと、必ずしもそうではありません。
前後の文脈や、他の条文や法体系全体との整合性などを考えると、「文言そのままの意味」では不合理であったりおかしな結論になることがあります。

つまり、単純に「条文の文言そのまま」の意味で理解するのではなく、論理的に考えて、もう少し違った適切・妥当な意味に捉える方法を、論理解釈といいます。

論理解釈においては、条文に「馬」と書かれてあっても、場合によっては白黒模様で「モ~」と鳴く動物がそこに含まれる可能性も出てきます。


このような論理解釈は、特別な例ではなく、あらゆる場面で普通に行われるものです。
そのため、法解釈では、日本語の「普通の意味」と多かれ少なかれズレが生じることも珍しくありません。

これは、英単語とか漢字の意味を暗記していた義務教育や高校レベルでの学習内容と大きく異なるところです。
高校までの国語のテストで、四字熟語の意味が問われているときに、辞書に載っている意味と異なる内容を書いたら不正解となりますが、法学では必ずしも不正解とはいえない。
したがって、日本語の意味を知っていても、必ずしも法律の内容を正しく理解できません。

ここが法解釈の難しいところです。


そうすると、どう「論理的」に解釈するのか、ということが問題となってきます。


というわけで、次回は、論理解釈についてもう少し詳しく書こうと思います。

では、今日はこの辺で。

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