司法書士の岡川です。
今日は成人の日でした。
例年のように、成人式で暴れて逮捕される事件が報道されていますね。
中には重傷を負わせた傷害事件なんてのも起きているようで、粛々と刑事手続に乗せていただきたく。
さて、成人の日というのは、いうまでもなく成人になったことをお祝いする日です。
もう少し詳しくいうと、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日です(国民の祝日に関する法律)。
条文上、「おとな」になった「青年」を祝うということで、「成人」を祝うとはなっていませんね。
どういう経緯でこういう文言になったかは分かりませんが、「成人の日」いうくらいだから、成人をお祝いしておけば間違いないでしょう。
では、そもそも「成人」とは何か。
「大人とは何か」といった哲学的な問いではなく、「成人」の定義の話です。
「成人」というのは、成年に達した人のことをいいます。
ここで「成年」を「成人となる年齢」と定義づけてしまうと、完全なトートロジーなので、正確に定義付けをするならば、一般的には「完全な行為能力を取得する年齢」といった意味になります。
民法上、成人と未成年者とで行為能力に差がありますので、いつをもって成年とするか(成人の定義)が重要になります。
ということで、民法4条に「年齢20歳をもって、成年とする」と規定されています。
民法の条文では、成年に達した者を「成人」ではなく「成年者」としていますが、意味は同じことですので、成人というのは、満20歳以上の人をいうことになります。
これはあくまでも民法上の定義ですが、これが他の法分野でも妥当します。
他方、刑法においては、行為主体(平たくいうと犯罪行為をする側)に関して、成人と未成年者の区別に意味はありませんので、「成人」とは何かの定義はありません。
成人にのみ適用される犯罪とか、未成年者にのみ適用される犯罪というのが存在しないので、「成人」を定義する必要がないのです。
もっとも、客体(平たくいうと犯罪の被害者)については、成人かそうでないかによって区別される犯罪類型があります。
すなわち、未成年者が客体となっている準詐欺罪や未成年者略取誘拐罪、人身売買罪がそうです。
この場合の「未成年者」については、刑法上の定義はありませんので、民法の定義に従うと解されています。
つまり、未成年者誘拐の客体は20歳に満たない人ということになりますね。
刑法に成人の定義はありませんが、刑事法の中には、成人とそうでない人が区別されることがあります。
それが、刑法及び刑事訴訟法の特別法である少年法です。
少年法では、民法よりもっと端的に「この法律で「少年」とは、20歳に満たない者をいい、「成人」とは、満20歳以上の者をいう」と定義されています。
結論的には、民事法上も刑事法上も成人というのは、満20歳以上の者ということになりますね。
ただし、民法上は、「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす」との規定があります(民法753条)。
つまり、満20歳に達していなくても、結婚すれば民法上は成年者として扱われます。
これを成年擬制といいます。
刑事法上(少年法等)はこのような例外はありません。
また、刑法上には「14歳に満たない者の行為は、罰しない」という規定があります(刑法41条)。
これは、刑法上の責任年齢の規定であって、成年の規定(「14歳をもって成年とする」といったもの)ではありません。
そうすると、14歳に満たない者を「刑事未成年」ということがありますが、あまり正確な表現ではないと思われます。
なお、「成人」が「おとな」のことだとすれば、「こども」の定義についても、法律で色々と決められています。
この辺は、こちらの記事を参照→「未成年?少年?児童?」
では、今日はこの辺で。
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