2016年1月26日火曜日

不倫の相手に対する慰謝料請求

司法書士の岡川です。

タレントのベッキーさんが既婚者のミュージシャンの川谷某さんと不倫したとかしてないとかいう話題が、世間を賑わしている今日この頃。
SMAP解散騒動で全部すっ飛ぶかと思いきや、SMAP騒動が意外と早く収束したり、新たなLINE画像が流出したりと、まだまだ長引いておりますね。

イメージを売り物にする仕事であるタレントが、なんでわざわざそんなイメージを失墜させる危険を冒すかなという気がしないでもないですが、絶対にバレない自身があったのでしょうか。
正直なところ、個人的には結構どうでも良かったりしますが。


さて、夫婦間では貞操義務というものがありまして、既婚者が第三者と不貞行為(法的には、性的関係があった場合をいいます)をしたときは、配偶者から不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)をされる可能性があります。
不法行為というからには、他方配偶者の権利侵害がないといけませんが、不貞行為をされた側の夫又は妻としての(「婚姻共同生活の平和の維持」といった内容の)権利又は利益が侵害されたと説明されます。

理屈の上では、婚姻を継続しながら慰謝料請求されることもありえますが、離婚慰謝料という形で請求される(離婚協議の中で決められる)というのが一般的ではないでしょうか。

さて、不貞行為というのは、一人ではできないもので、必ず不貞行為の相手がいるはずです。
今回のベッキーさんですね。

不貞行為というのは貞操義務違反ですので、本来的には夫婦間の問題です。
誰の不貞行為かというと、今回でいうと川谷某さんが不貞行為をしてるわけです。

ただし、第三者であっても、上記のような「妻の権利」というのを侵害することは可能であり、第三者である不貞行為の相手方(今回のベッキーさん)も、場合によっては不倫相手(川谷某さん)の配偶者(川谷某さんの妻)に対する不法行為が成立することになります。

外国では、「貞操義務は夫婦間においてのみ成立する相対的なものであって、第三者については自由恋愛の範疇である。したがって、不貞行為の相手方に対する慰謝料請求は認められない」といった考え方が主流だともいわれます。
ただ、少なくとも日本の判例では、第三者に対する慰謝料請求も認められています。


もしベッキーさんの行為に不法行為の要件が備わっていれば、川谷某さんの妻に対して慰謝料を支払わなければならなくなります。

まず、本当に「単なるお友達」であったなら、違法性も何もありませんので不法行為の問題にはならないでしょう。
そんなことは無いでしょうが。

それから、不法行為が成立するには「故意または過失」が必要です。
既婚者が既婚者であることを隠しており、それと知らずに付き合った場合は、もちろんその既婚者自身は不貞行為となりますが、付き合った第三者は故意が否定され、少なくとも過失が認定されない限り慰謝料請求されることはありません。

どうやら、最初は知らなかったみたいですが、既婚者だとわかった後も交際を続けたとかそんな感じですので、故意が成立しますね。
「既婚者であることを隠されて交際を始めた」ってのは、よくある話ではありますが、そこはほら大人なんですから、相手が既婚者とわかった段階できちんと対応すべきです。

それから、婚姻関係がすでに破綻していたかどうか。
形式上、戸籍の上では夫婦であったとしても、実質的に婚姻関係が破綻していたような場合は、不貞行為をしようが何をしようが、そもそも最初から破綻している夫婦間では、保護すべき利益も存在しないことが考えられます。
本件でどうだったかは知りませんが、別居してたわけでもなさそうですし、必ずしも既に婚姻関係が破たんしていたとはいえないと思われます。
離婚届がどうとかそんな話もあるみたいですが、どうなんでしょうね。


ちなみに慰謝料に相場は「あってないようなもの」ですので、数十万円の例から数百万円になる場合もあります。
140万円以下なら簡易裁判所管轄、それ以上なら地方裁判所管轄になりますね。


そういえば、モーニング娘。の矢口某さんが不倫をしたときは、大バッシングを受けてしばらく芸能界から遠ざかっていました。
今回、矢口某さんの立場にあるのはベッキーさんではなく、川谷某さんなわけですが、なぜか今回はベッキーさんが批判の矢面に立っているように思います。

この違いは何でしょうか?
上記の通り、貞操義務に違反した(かもしれない)のは川谷某さんなわけで、より悪いのもこちらなんですよね。
レギュラー番組とかCMがあるかないかの違いですかね~。


というわけで、いくら仲が悪くても、夫婦は夫婦。
芸能人ではなくても、既婚者とのお付き合いは、よくよく考えましょう。

では、今日はこの辺で。

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