2016年1月21日木曜日

日本ライフ協会の預託金流用問題

司法書士の岡川です。

公益財団法人日本ライフ協会が、預託金を流用していたというニュースがありました。

同法人は、高齢者や障害者の身元保証や、死亡時の葬儀の手配等を行う「みまもり家族事業」なる事業を行っていたようで、その葬儀代等に充てるため、サービス提供の料金である「会費」とは別に、予め一定の金銭(預託金)を預かっていたようです。

公益認定等委員会には、預託金は弁護士や司法書士が管理するということで届け出ていた(この契約形態を前提に、公益認定を受けていた)ようで、同法人のホームページでもそのように紹介されています。

さて、その預託金ですが、総額は9億円にもなるようですが、その一部を、弁護士や司法書士に管理させることなく、法人自体で直接管理しており、かつ、それを事業資金として流用していたようです。
その結果、2億7000万円の不足が生じているとのこと。

近年、同様のサービスを行う団体は増えていますが、公益法人がここまで組織的に預託金の流用を行ったという事例は、前代未聞だと思います。


正確な契約内容は分かりませんが、このようなサービスにおける預託金は、使途が決まっている(例えば葬儀代金等)ので、基本的には、「預かった額をそのまま置いておくもの」であって、法人の事業資金として使うことは想定されていないはずです。
本来それは「他人(お客)のお金」ですから、9億円預かったら、9億円の預金が残っていなければいけません。

事業拡大のためだか何だか知りませんが、事業資金が足りないからといって、勝手に「他人(お客)のお金」に手をつけるのは許されません。
「そういうことをしませんよ」「預託金は預託金で区別して管理しますよ」ということを示すために、わざわざ預託金は弁護士や司法書士が管理すると紹介し、かつ、それを前提に公益認定をとっておきながら、法人で預託金を直接管理したうえに事業資金に流用するというのは、利用者の信頼を裏切る行為で、非常に悪質です。
勧告に従って、今から不足分を回復させるようですが、資金を回復すればよいという問題ではないでしょう。

もし仮に、これと同じようなことを司法書士が行って、依頼者からの預り金を事務所運営資金に充てたりしたら、場合によっては業務上横領罪が成立し、もちろん一発で業務禁止(資格剥奪)になる大問題です。

ちなみに今回は、公益財団法人であったことから、公益法人法違反として勧告を受けたようですが、法人自体に横領罪は成立しませんし、私的流用したわけでなければ理事にも横領罪は成立しません。
損害賠償責任を問われる可能性はありますけどね。


日本ライフ協会は、理事全員が辞任し、法人が直接預託金を管理する形態は完全に廃止したようです。

同法人だけでなく、同種のサービスを行う事業者は色々あります。
サービス利用を検討されている皆さんは、事業者選びは慎重に行いましょう。


ちなみに、老後の財産管理や死後事務に関しては、私の専門分野ですので、大阪の方はぜひ当事務所にご相談ください(宣伝)。

当事務所の財産管理サービスはこちら→任意後見契約(事務所サイトの該当ページに飛びます)


(追記)続報です→日本ライフ協会が民事再生法適用申請した件


では、今日はこの辺で。

0 件のコメント:

コメントを投稿