司法書士の岡川です。
地味に新聞等で報道されているのですが、商法が大きく改正されるようです。
以前もちらっと書いたことがあるのですが(→参照「六法全書と六法」)、「商法」という法律は「六法」のひとつに数えられ、基本的でかつ重要な法律のひとつです。
商法は商事に関する一般法であり、「商人」や「商行為」についての総則的なルールが規定されているのが商法ですので、商法なしには会社法も語れません。
もっとも、現行商法は、一昔(二昔くらいかも?)前とは大きく異なっており、六法の一員としてもてはやされていた、かつての栄光は失われかけています。
というのも、かつて商法に規定されていた多くのルールが独立し、個別の法律として制定されているからです。
手形や小切手に関する部分は、昭和初期に手形法と小切手法に持って行かれ、2005年には会社法が制定されたことで、会社に関する部分がごっそりと持っていかれ、2008年には保険法が制定されて保険に関する部分が消えました。
こんなふうに独立の法律ができた部分が削除されていった結果、現行商法がカバーする領域は、だいぶ狭くなりました。
春秋時代の周王朝みたいなもんですね。
条文数としては、パッと見は851条まであるんですけど、実際の条文数はそれよりはるかに少ない。
スッカスカです。
どれくらいスッカスカかというと、例えば33条から500条はありません。
もともと会社に関する条文があったんですが、前述のとおり会社法に全部持っていかれたので、まるっと全部削除されています。
この段階で既に500カ条くらい水増ししてることが分かります。
今でも残されているのは、「第1編商法総則」「第2編商行為」「第3編海商」です。
海商だけ浮いてる感じがしなくもないですが、現行商法の成り立ち(もともと広い範囲をカバーしていた法律から、色々と独立していった残りが現行商法)を考えれば仕方がないことです。
で、その浮いた感じの「海商」と、商行為の中にある運送関係の規定を中心に、このたび商法が改正されることになりました。
具体的にどう改正されるかは、まあ、日常生活にはあんまり関係ないから、運送関係の仕事をしている人だけ注目してればいいんじゃないかな。
(大きなところでは、商法制定時に存在しなかった航空運送の規定が新設されるとか。時代を感じますね)
それと、この機に、一部残っていたカタカナ交じりの条文が全部口語化されるそうです。
古い法律は、最近の法律と違って漢字とカタカナで書かれているのですが、商法にもカタカナ部分が残っています(第3編は全部漢字とカタカナで書かれています)。
それも、いわゆる「文語」ですので、慣れないと何を書いているか非常にわかりにくい。
民法や刑法などは既に口語化されているので、主要な法律では商法だけ取り残された状態でした。
それが解消されるとのことです。
ちょっと寂しい。
そうそう。
あんまり関係ないんですけど、商売をする人のことを「商人」といい、法律上は「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」と定義されています。
この「商人」という言葉の語源なんですけど、前述の周に倒された殷という国がありまして、殷は商とも呼ばれていたのですが、その「商の人」を指す「商人」(この場合「しょうひと」と読む)という言葉が転じて「商い(あきない)をする人」の意味になったとかいう説があるんですね(あくまで一説です)。
商の人(子孫)は、行商で生計を立てる人が多かったとかなんとか。
真偽不明ですけどね。
では、今日はこの辺で。
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