2019年7月31日水曜日

債権法改正について(33)(更改)

司法書士の岡川です。

民法を勉強していて、言葉は知っているし何となくイメージできるんだけど実際のところ正確に把握できてるか不安というかたぶん不正確なんだろうなと思わざるを得ない法律用語ベスト10くらいには入りそうな概念といえば、そう、「更改」ですね。

まず「更改」の概念から説明しなければ…と思いましたが、既に過去の記事で書いていました。

参照→「契約の更改


というわけで、地味に更改の規定についても改正の対象となっています。

まずは更改の定義ですが、こうなりました。
第513条 当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
二 従前の債務者が第三者と交替するもの
三 従前の債権者が第三者と交替するもの


現行法では、「当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する。」となっていたので、より具体的な定義になりました。
現行法との異同でいうと、基本的には従前の解釈の明確化だというのが一般的な理解です。

なお、条件の変更は債務の要素の変更とみなす「みなし更改」の規定である513条2項が削除されたわけですが、これは、実務上用いられたことがなく、存在意義に乏しいとされたからです。


実質的に大きな変更となったのは、514条以下です。

まず、債務者交替の更改ですが、現行法では、債権者と新しい債務者との間の契約で可能とされており、例外的に更改前の債務者の意思に反するときは不可とされていました。
これが、改正により、更改前の債務者の意思は関係なく、債権者が更改前の債務者に通知すれば更改の効力が生じることになりました。
また、この場合に新しい債務者から元の債務者に対する求償権が発生しないというのも明記されました(514条2項)。

「元の債務者の意思に反しても可能だけど、元の債務者への求償権は生じない」というルールへの変更は、免責的債務引受の改正と同様ですね。


他方、債権者交替の更改は、基本的に現行ルールがそのままなわけですが、債権譲渡における異議をとどめない承諾の規定が削除されたことに連動し、これを準用していた516条が削除されています。

517条も削除されています。
これは、更改契約が無効だったり取り消された場合に、旧債務が消滅しない場合を規定した条文ですが、そもそもそのような場合は消滅しないのが原則であるし、逆に消滅する場合を定めた条文と解釈しても、これを一律に決める合理性もないということで削除されたようです。


518条は、更改により消滅する旧債務の担保として質権や抵当権が設定されていた場合に、これを新債務に移す方法に関する規定。
現行法では、当事者間の合意によることになっていましたが、債務者が拒絶できるのは不当であるということで、債権者から債務者への一方的な意思表示で可能となりました。

改正で更改制度が使いやすくなったのかどうなのか。
大抵のことは更改という概念を使わずに(債権譲渡、債務引受、準消費貸借等)説明つくので、イマイチ良くわかりませんね。

では、今日はこの辺で。

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