2013年6月10日月曜日

後見人には誰がなるか?

司法書士の岡川です。

成年後見シリーズ第5回目です(第4回目は、「後見終了後の問題」をご覧ください)

前回までの記事で、成年後見制度がどういうものかイメージできましたか?
今回は、成年後見制度の一番重要な点ですが、後見人等にはどういう人が就任するのか、について書こうと思います。


現在の成年後見制度が開始された当初は、親族(特に子)が就任するケースが圧倒的に多く、実に9割が親族後見人でした。
しかし、親族後見人の割合は年々減少しており、現在では5割を切っています。
逆にいえば、現在では親族以外の第三者後見人が選任される例が過半数だということです。

昨年(平成24年)、新たに選任された後見人のうち、最も多いのは「子」で、これが全体の25%程度です。
次いで多いのが、実は私たち司法書士でして、新たに選任される後見人等の約20%が司法書士です。

財産管理の制度なら弁護士?というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
確かに、制度が始まったとき(まだ親族以外の後見人が全国で数百人程度だったころ)は弁護士の方が多かったのですが、数年でその件数は逆転し、それ以来ずっと司法書士が先頭を走って成年後見制度を支えています。

司法書士の他には、弁護士が全体の15%程度、社会福祉士が全体の10%程度となっています。

この司法書士、弁護士、社会福祉士の三者は、特に「専門職後見人」とよばれ、司法書士と弁護士が法律の専門家として、社会福祉士が福祉制度の専門家として、いずれも「成年後見制度を担う専門職」として成年後見業務に関与しています。


また、最近では、「親族後見人」「専門職後見人」に加えて、新たに「市民後見人」という選択肢もできました。
一定の研修(これには、専門職が関与しています)を受けた市民が名簿に登載され、そこから選任される制度です。


実際の選任方法としては色々なパターンがありますが、代表的な例は次のようなものです。

まず、後見開始の申立てをする段階で後見人候補者を指名しておくパターン。
候補者としては、例えば申立人が本人の子である場合などは、自分を候補者にする場合も多いでしょう。

しかし、後見人というのはなかなか大変な仕事なので、別の人を候補者にすることもあります(前述の通り、今では親族以外の第三者後見人が過半数)。

後見開始の申し立ては、家庭裁判所の手続きですので、裁判所の手続きの専門家である司法書士が申立てに関与することが多くあります。
そこで、申立手続に関与した司法書士を候補者とすることがよく行われます。

前述の通り、司法書士は専門職として後見業務に携わっている関係から、むしろ「司法書士に後見人候補者になってもらうこと」が主たる依頼で、付随的に「申立手続も同時に依頼する」というパターンも少なくありません。

同じような理由で、弁護士を候補者にすることも可能です(弁護士も当然、申立手続を行うことができるからです)。

社会福祉士は、専門職ではありますが、法律職ではないので申立手続と候補者を両方依頼するということはできません(申立てについては、司法書士や弁護士が行い、社会福祉士が候補者になる、ということはありえます)。


申立手続に全く専門家が関与しない場合など、適当な候補者がいない場合は、候補者を指定せずに申立てすることもできます。

また、仮に候補者を出していても、裁判所が不適切だと判断すれば、その人は後見人になることができません。
(専門職が候補者になっている場合は、特段の事情がない限り、基本的にはその人が選任されるはずですが)

このような場合は、裁判所が第三者(基本的に専門職後見人)を選任します。

裁判所には専門職後見人候補者の名簿(司法書士、弁護士、社会福祉士、それぞれの名簿があります)が提出されています。
この名簿は、例えば司法書士の名簿には、司法書士の全員が載っているというわけではなく、特に後見業務に関する能力担保と適切な指導監督体制が確保された者だけが登載されています。

申立て時に候補者がいない場合は、この名簿の中から適当な人が選任されることになります。
ちなみに私も名簿(後見人候補者名簿、後見監督人候補者名簿の両方)に登載されています。


さらに、市民後見人が候補になる制度も動き始めています。
高齢者の一人暮らしの場合(かつ、管理すべき財産も多くない)など、財産管理よりもむしろ頻繁な見回りが必要な人などは、市民後見人が適当だと判断されることになるでしょう。
この場合、後見人は市民後見人名簿の中から選任される可能性もあります。

市民後見人については、まだまだ本格的にスタートしたばかりなので、どういう運用がされるかは、今後の動きを見守る必要がありますね。


次回、実際に成年後見制度を利用するまでの流れをご紹介し、とりあえずこのシリーズ一区切りとします。

では、今日はこの辺で。


成年後見シリーズ

第1回「成年後見制度入門
第2回「法定後見の類型
第3回「任意後見契約について
第4回「後見終了後の問題
第5回「後見人には誰がなるか?」 ← いまここ
第6回「成年後見制度を利用するには?
番外編「成年後見の申立てにかかる費用」 
番外編2「成年後見の申立てにかかる時間
(このほかにも、成年後見についての記事はありますので、右上の検索窓で検索してみてください)  

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