2013年8月19日月曜日

罪刑法定主義

司法書士の岡川です。

近代刑法で最も重要で、最も基本的な大原則に「罪刑法定主義」があります。
これは、「法律無ければ刑罰なし」といい表されるとおり、人を罪に問う(ある人の行為を犯罪として処罰する)には、予め国が制定する(成文の)法律によって、その行為を「犯罪」と定めておかなければならないというものです。
罪刑法定主義の対義語は「罪刑専断主義」といいます。
どのような行為を犯罪とし、どのような刑罰を科すかを国家機関が裁量的、恣意的に決め、処断する仕組みです。
近代刑法が確立する以前は、罪刑専断主義が一般的でした。

予め何が犯罪で何が犯罪でないかを定めておかなければ、人々は安心して自由に行動することができません。
どの行為が犯罪であるかが法定されており、「法定されたもの以外の行為で処罰されることがない」という原則が確立していれば、人は犯罪と規定された行為を避ける限り、自由が保障されていることになります。
つまり、罪刑法定主義は、自由主義の要請に基づくものだといえます。
また、刑罰は、犯罪者の生命・身体・財産等の人権を合法的に侵害する行為であり、「何を犯罪とするか」は、国民の利害に重大な関わりを有する事項です。
したがって、それは誰かが勝手に決めるのではなく、議会の制定する法律で決めるのが望ましいといえます。
つまり、罪刑法定主義は、民主主義の要請に基づくものでもあるのです。

さらには、刑法が犯罪を予防するためのものであるという思想(一般予防論)を前提に、禁止する行為を予め法律で制定して国民に提示しておくことで、初めて刑法が抑止効果を発揮できる、という点が、罪刑法定主義の理論的根拠として指摘されることもあります。

この刑法の大原則の罪刑法定主義ですが、もう少し詳しくみると、色々な派生原理が存在します。
次回から、罪刑法定主義の派生原理を紹介します。

では、今日はこの辺で。

罪刑法定主義シリーズ
1.罪刑法定主義 ← いまここ
2.罪刑法定主義の派生原理その1「法律主義」
3.罪刑法定主義の派生原理その2「遡及処罰の禁止」
4.罪刑法定主義の派生原理その3「類推解釈の禁止」
5.罪刑法定主義の派生原理その4「絶対的不確定刑の禁止」
6.罪刑法定主義の派生原理その5「明確性の原則」

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