2014年3月12日水曜日

「起訴」の意味

司法書士の岡川です。

一昨日は、一口に「訴える」といっても色々あることをご紹介しました。

細かいことですが、そのうちの「起訴」という語について補足しておきます。

一般的に「起訴」というと、「公訴の提起」の略です。
「公訴」とは、「公の訴え」であり、具体的には、犯罪者に対する刑罰権の発動を求める訴えのことをいいます。
なので、この意味で「起訴」といえば、刑事手続上の制度です。

日本においては、公訴の提起は、検察官が国(行政)を代表して、司法を担う裁判所に対して行うものです。
公訴権が国の機関(検察)に独占されている制度を「国家訴追主義」「起訴独占主義」といいます。

他方で、海外には、私人(一般人)が起訴することができる制度もあり、これを「私人訴追主義」といいます。



ところで、民事上の「訴えの提起」の意味でも「起訴」という語を使うことがあります。
主に、何か他の文言と一緒になって略す場合に使われます(なので、条文の文言として出てくることはありません)。


まず、民事訴訟法275条にいう「訴え提起前の和解」という制度。
これは、即日で終了することから「即決和解」ともいいますし、「訴え提起前の和解」を略して「起訴前の和解」ともいわれます。

それから、民事訴訟法142条にある「重複する訴えの提起の禁止」の原則を、「二重起訴の禁止」といいます。

また、民事保全法37条の規定により、保全命令を出したのに、申立人が(本体の手続きであるはずの)訴えの提起をしない場合に、「期間内に訴えを提起しろ」と命ずることができる制度があります。
これを「起訴命令」といいます。


これらの制度では、「起訴」という語が使われますが、刑事手続とは関係ありませんので注意しましょう。

では、今日はこの辺で。

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