2014年4月18日金曜日

「不法行為」とは何か

司法書士の岡川です。

そういえば、そもそも「不法行為」とは何かについて書いてなかったですね。

不法行為というのは、原則として民法709条に規定されている、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」する行為をいいます(さらに、その特則として、責任が加重されたものも含む)。

「違法行為」ってのとは違うのか?というと、似て非なるものです。
「違法行為」は、「違法な行為」という程度の意味ですが、「不法行為」というのは、民法709条以下に規定されている民法上の概念です。
つまり、「不法行為」は、「不法な(違法な)行為」の総称ではなくて、「不法行為」でひとつの固有名詞なのです。

名前から明らかなように、不法行為が違法な行為であることは確かなのですが、そのうち、民法等に規定された一定の要件を満たした行為のみを指すことになります。


ちなみに、一定の要件を満たす違法な行為を指す刑事上の概念として、「犯罪」という概念があります。
ある違法な行為が、犯罪であり、かつ不法行為でもあることは、少なくありません。
その行為の刑事責任について考えるときは「犯罪」として扱われ、民事責任について考えるときは「不法行為」として扱われるというわけです。

もちろん、犯罪と不法行為では、それぞれ別の法律に規定され、要件が異なるので、その範囲は一致しません。
犯罪だからといって不法行為が成立しないこともあるし、逆に不法行為だからといって犯罪にはならないことも多くあります。


さて、ある行為が不法行為の要件を満たした(不法行為が成立する)場合、どうなるのか。
すなわち不法行為の効果とは何かという話です。

犯罪の効果は刑罰ですが、不法行為の効果は、「損害賠償」です。
すなわち、不法行為をした者は、損害を与えた相手対して、その損害を賠償しなければなりません。
逆にいえば、不法行為の被害者は、加害者に対して損害賠償請求権を取得します。

「犯罪」の効果が「国家による刑罰」という「国と個人」の関係であるのに対し、不法行為の効果は、「加害者から被害者への賠償」という「個人と個人」の関係になります。

犯罪を規定する刑法が「公法」に分類され、不法行為を規定する民法が「私法」に分類されるのと対応していますね(→「私法と公法」)。


では、今日はこの辺で。

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5 件のコメント:

  1. 初めまして、こんばんは。
    教えて下さい。
    ネットに自分の写真を無断掲載されました
    損害賠償請求が出来るとおもうのですが
    司法書士さんでもお願いできますか?
    弁護士さんだけでしょうか?

    それと損害賠償で賠償される金額と
    訴訟を起こす金額は訴訟を起こすほうが
    高額な料金がかかりますか??

    すみませんが、教えて頂けると
    助かります。
    宜しくお願いいたします

    返信削除
  2. >匿名さん

    司法書士に依頼することが可能です。
    その場合、依頼の内容としては、2とおりあります。

    まず、ご自身が(月1回程度、1回10~30分程度、合計1~3回程度)裁判所に行けるのであれば、訴状等の作成と諸手続の代行・支援を依頼する方法(本人訴訟支援)。
    もうひとつが、訴える額が140万円以下であれば、司法書士に代理人として裁判所に行ってもらう方法(代理訴訟)。

    どのような写真であったか、どのような文脈で掲載されたか、等によっても異なってきますが、一般的に、写真の無断掲載等での損害賠償額はそれほど高額になりませんので、どちらの方法でも可能だと思います。
    一般的に本人訴訟支援のほうが低額で済みますが、「月1回であっても平日昼間に裁判所に行くことができない」なら、代理訴訟になります。

    費用ですが、本件の場合、裁判所に支払う費用は、数千円からせいぜい1万5000円程度です。

    ただし、司法書士や弁護士に依頼した場合、少なくとも数万円は必要になります。
    旧弁護士報酬規程で依頼を受けている弁護士であれば、着手金10万円です。
    司法書士のほうが比較的安く引き受けてくれる可能性はありますが、それでも、「数千円」で動いてくれるということはないでしょう(友人特価とかいうのであれば別)。

    他方、個別の事案について資料を見ずに断定することはできませんが、賠償額は、数万~数十万程度だと思われます。
    単に無断掲載されただけなら、それほど高額にはなりませんし、何らかの不名誉な事実がそこに写っていたりすれば高額になる可能性があります。
    なお、それが確実に支払われるかどうかはわかりません。

    損害賠償を請求するには、裁判以外にも方法はありますので、地元の司法書士や、司法書士会が行っている相談会に、いちど資料をもって相談に行かれることをお勧めします。
    なお、司法書士に依頼する場合、少なくとも「裁判手続」を業務に掲げている司法書士を選ぶとよいでしょう。
    そうでない事務所(特に、法務局周辺にある事務所)は、登記業務に特化している可能性がありますので。

    返信削除
  3. 丁寧なお返事ありがとうございます。
    さっそく、地元の相談会を調べてみたいと思います。

    裁判以外にも損害賠償出来るなんて
    全く知りませんでしたので、とても参考に
    なりました。ありがとうございました。

    すみません、追加でもう少し
    教えて頂けると助かります。

    以下お願いします。


    無断掲載の写真は習い事のスクールがネットで広告会社に
    広告依頼したもので、スクール側に昨日夜電話にて
    対応を求めましたが、広告会社側の都合で
    7月末まで写真掲載中止は無理だと思うと言われました。

    本日自分で、広告会社に電話し、
    不法行為がなされているのに
    すぐ対応が出来ないのは本当か?とたずねてみると
    すぐ対応してくれ本日夜写真消去をして頂きましたが

    ネットだけでなく
    雑誌(習い事の)にも無断掲載されている事が
    広告会社調査でわかり
    これはもう発売されており回収不可だといわれました。
    次号発売は月末ですので、こちらは今日から2週間近く
    野放しで泣き寝入りする事になりました。

    昨日、こちらからスクールにネットの写真無断掲載に
    対する電話を入れた際も
    一言も謝罪の言葉はありませんでしたし、
    「ネットも雑誌もスクールの教室前に飾る看板など
    一切私の写真は使わないで下さい」と
    雑誌にも写真掲載されているとは知らず
    たまたま、こちらからお話した時も
    「ネット以外も実は雑誌も無断掲載していた」との
    一言もありませんでした。

    今日も広告会社の方がすべて処理してくださったものの
    スクール側からは留守電に簡単な謝罪のメッセージが
    残されていただけで全く不法行為に対しての
    謝罪とは感じられませんでした。
    自宅に謝罪に訪れるつもりもないようで
    その留守電1本ですべてを終わらせようと
    しているようです。

    簡単な留守電1本の謝罪しかないこと
    ネットだけでなく
    雑誌も無断掲載していたのに
    それを私に隠した事、7月まで写真は変えられないと
    言った不誠実な対応、
    これらは非常に悪質だと感じました。

    こういった悪質さは損害賠償額に反映されるのでしょうか?
    慰謝料といった形になるのでしょうか?
    これも微々たる額なのでしょうか?
    ネットだけでなく
    ネット、雑誌の2媒体での写真無断掲載であり、
    かつ雑誌はあと2週間ほど野放し状態ですが
    損害賠償額、慰謝料はネットだけとあまり変わらないでしょうか?

    それと、広告会社にて写真を消去してもらい
    証拠写真がなくなってしまったのですが
    これは広告会社に証拠として請求出来るのでしょうか?
    (雑誌は明日買いに行く予定です)


    (また写真自体は習い事の発表会のもので
     特に誹謗・中傷は受けてはいません。)

    長々とすみません
    どうぞ、お力をお貸しください。
    宜しくお願い致します。

    返信削除
  4. >匿名さん

    あまり個別具体的な相談について、この場で(資料も見ずに)断定的なことは申し上げられない、ということはご了承いただき、一般論としてお答えします。

    まず、損害賠償請求する場合、精神的損害に対する賠償、すなわち「慰謝料」を請求することになります。
    そしてこの慰謝料というのは、相場があるようで無い、無いようである・・・というもので、どのくらいになるか、ということは非常に難しいものです。
    一応の相場があるのは、交通事故による通院慰謝料など、定型的な事案に限られます。
    名誉、プライバシー、人格権、などの侵害については、特に慰謝料算定が難しい分野です。

    考慮される事情としては、
    ・加害者の対応が不誠実である
    ・媒体が複数である
    ・写真が広く頒布される
    といった事情は、賠償額を増額させる要素でしょう。

    他方で、
    ・「習い事の発表会」という、不特定多数の人から見られる場での撮影
    ・ネットに掲載されていたのが短期間
    という事情は、賠償額を減額させる(あるいは、違法性を否定する)要素になると思われます。


    それから手続きに関して。
    証拠は自分で集めるのが原則です。
    インターネット上の写真は、「キャッシュ」が残っている可能性がありますので、これが残っていれば削除された画像も抽出できることがあります。
    周りのパソコンに強い人に教えてもらってください。


    ちなみに、裁判以外の方法としては、調停やADR等があります。

    ADRとは何か?↓
    http://okagawa-office.blogspot.jp/2014/05/adr.html

    調停は、簡易裁判所で行います。
    ADR機関としては、大阪だと総合紛争解決センター、東京だと東京司法書士会の調停センターなど、色々なものがありますので、地元ではどのような機関が使えるか、相談会で聞いてみてください。

    返信削除
  5. お忙しい中お返事ありがとうございました。

    通りすがりの私に惜しみなく
    たくさんの知識を教えて頂き
    ありがとうございました。
    不法行為を受けたのが初めてで
    わからない事ばかりの中、
    とても参考になりましたし、
    ご助言頂ける事で精神的にもとても
    助けられました。

    じっくり考えて訴訟を起こすかどうか
    決めようと思います。

    本当にありがとうございました。
    只々、感謝しか有りません。

    返信削除