2015年3月18日水曜日

少年審判が始まるまで

司法書士の岡川です。

さて、低速更新の少年法シリーズですが、少年保護事件の中核となる「少年審判」について書こうと思います。

おさらいですが、少年保護事件では、非行少年は家庭裁判所の審判(少年審判)に付されることになります。

実際には、審判に付されない(家庭裁判所において、審判不開始の決定がなされる)場合も多いことは前回書いたとおりですが、審判に付すか付さないかはともかく、多くの事件が家庭裁判所に送られてきます。

今日取り上げるのは、どういう流れで家庭裁判所に送られてきて、審判が始まるのかという話です。

一般の刑事事件では、警察に検挙されて、警察から検察に送致(送検)されて、検察が裁判所に起訴すれば訴訟が始まります。
しかし、少年審判は、これとは少し違った流れになっており、そもそも管轄からして違います(通常の刑事事件は、地方裁判所や簡易裁判所ですが、少年審判は家庭裁判所で行われます)。


警察や検察が受理した少年事件で、犯罪の嫌疑があるもの、つまり犯罪少年の事件は、全て家庭裁判所に送られることになります。
犯罪の嫌疑がなくても、審判に付すべき事由があると思料される場合も同様です。
一般の刑事事件のように、警察が微罪処分で事件を終わらせたり、検察が不起訴処分で事件を終わらせたりするようなことはありません。

少年保護手続は、少年の処罰を目的としたものではないので、仮に犯罪事実が軽微であり、刑事処分がなされることがない事件(不起訴になるような場合)であったとしても、捜査機関限りで事件を終了させることなく、必ず家庭裁判所が少年の要保護性を判断することになるのです。
これを「全件送致主義」といいます。
もちろん「全件」といっても、犯罪の嫌疑がなく、審判に付すべき事由もないような場合まで送致されるものではありません。

また逆に、犯罪の嫌疑があるからといって、検察官がいきなり地方裁判所や簡易裁判所に起訴することもできません。


犯罪少年は、警察から直接家庭裁判所に送致される場合(罰金以下の刑にあたる犯罪)もありますし、通常の刑事事件のように一度検察官に送致され、検察官から家庭裁判所に送致される場合もあります。
触法少年は、警察から検察に送致されるのではなく、児童相談所長に送致されることがありますが、そこからさらに家庭裁判所に送致されることもあります。
虞犯少年についても、審判に付すのが適当な場合は、警察から家庭裁判所に送致されることになります。

このように、少年の非行事件は、犯罪の嫌疑も審判の必要性もない場合や、児童福祉法上の措置が取られる場合などを除けば、全て家庭裁判所に集められることになります。

その後の手続は、どの類型の非行少年でも同じです。
家庭裁判所に送致された事件で、審判を開始するのが相当であると認められたものは、審判開始の決定がなされます。

このようにして家庭裁判所での審判手続が開始されるわけですが、そこで決めるのは「有罪か無罪か」ではありません。



少年審判の具体的な手続については、また次回に。

では、今日はこの辺で。

少年法シリーズ
1.少年法が対象とする少年
2.少年法の意義と理念
3.少年法における手続と処分
4.少年審判が始まるまで ← いまここ
5.少年審判とはどんな手続か
6.保護処分について
7.少年法と刑事手続 

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