2013年10月26日土曜日

故意犯処罰の原則

司法書士の岡川です。

刑法の原則のひとつに、「故意犯処罰の原則」というものがあります。
原則として、故意がある場合のみが犯罪として処罰されるという原則です。
法律の条文に「故意に」などといちいち書かれていなかったとしても、原則として故意を要件としていることになります。

これは、刑法38条1項に規定された実定法上の原則でもあるのですが、そこには、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない」とあります。

「法律に特別の規定がある場合」というのは、基本的には過失致死罪などの「過失犯」を想定しています。
過失犯は例外なので、一般的に過失犯より故意犯のほうが重いと考えられています。

なお、法律に特別の規定を置いたとしても、無過失の行為を処罰対象とすることは許されないと考えられています。
故意も過失もない行為を処罰してはいけないとする原則を、責任主義の原則といいます。


故意には、確定的故意(「あいつを殺す!」といったもの)だけでなく、不確定的故意まで含まれます。
不確定的故意の例としては、「死ぬかもしれないけど、死んでも構わない」というものがあります。
いわゆる「未必の故意」といわれるものです。
故意の成立には「結果発生を認識し、認容していれば足りる」という考え方であり、これを「認容説」といい、判例・通説となっています。

逆に、「死ぬかもしれない」とは認識していたけれども、その結果を認容していなかった場合は、「認識ある過失」といい、これは過失犯になります。


故意とは何か・・・という問題は、単純なようで、実は学説を二分するような(それはもう、「流派の違い」といってもよいくらい)、犯罪論の中でも最重要の論点だったりします。
なので、キリがないのであまり深く立ち入ることはやめておきます。

では、今日はこの辺で。

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