司法書士の岡川です。
前回の続きです。
産経新聞のタイトルになっていた「違法DL罰則化」です。
これに違和感を覚えませんか?
この話題が始まった昨年から、いたるところで不思議な日本語が使われています。
・ダウンロード刑罰化
・ダウンロード刑事罰化
・ダウンロード罰則化
などなど。
「ダウンロード違法化」というのは、正確ではありませんが、これはこれで別にいいのです。
「一定の範囲で」という留保がつきますが、平成22年に「ダウンロード」行為が「違法になった」わけですから、「違法化」という表現で間違っていません。
でも、「刑罰化」「刑事罰化」「罰則化」って何でしょう。
「違法ダウンロード」に「刑罰が科されるようになった」あるいは「罰則が設けられた」のであって、「違法ダウンロード」が「刑罰になった」とか「刑事罰になった」とか「罰則になった」わけではありません。
刑罰とか刑事罰というのは、刑法9条に定められた、「死刑」「懲役」「禁錮」「罰金」「拘留」「没収」のことをいいます(詳しくは、「そもそも「刑罰」とは何か」を参照)。
つまり、刑法上の罰(制裁)のことです。
ということで、ダウンロードが「刑罰化(刑事罰化)される=刑罰(刑事罰)になる」わけがありません。
それから、「罰則」というのは、その刑罰(刑事罰)を定めた規定のことをいいます。
罰則の「則」は規則の「則」ですね。
これまた、ダウンロードが「罰則化される=罰則になる」わけがありません(というか、「ダウンロード」が「罰則になる」ってどういう状況か想像できません)。
「罰則が定められている行為」つまり「刑罰が科される行為」のことを、法律用語として「犯罪」といいます(※)。
したがって、学問的には「犯罪化(criminalization)」というのが正しい。
逆に、罰則が削除された場合は、「非犯罪化(decriminalization)」といいます。
「違法DL罰則化」は、なんとなくいいたいことはわかりますが、おかしな表現なのです。
みなさん、日本語(法律用語)は正しく使いましょう。
では、今日はこの辺で。
※細かい話をすると、刑法学(犯罪論)においては、違法性と有責性まで具備したものを初めて犯罪と定義しますが、その他の分野では特にそこまで限定されません。
つまり、ダウンロード行為に罰則が定められたということは、(一部の)ダウンロード行為が「犯罪になった」ということです。
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