2013年12月2日月曜日

「後見人」とは

司法書士の岡川です。

「後見人」という言葉は、さすがに「日常生活」ではあまり使わないかもしれませんが、一般的な日本語としてもよく知られています。
幼少の人や未熟な人を背後で支える実力者といった意味で使われますね。

歴史上の話題や、政治家なんかの話であればそれでいいのですが、法的な制度としての「後見人」というのは、少し意味が異なります。
法的な意味での「後見人」は、必ずしも、 一族の長でもなければ、地元の名士でもないし、大物政治家でもありません。

現在の日本の法律で「後見人」とされるのは、民法に規定された成年後見人と未成年後見人、「任意後見契約に関する法律」に規定された任意後見人を指します。
これらは、判断能力が低下した人や未成年者につく支援者(代理人)であって、判断能力がしっかりした大人に対して、法的な意味での後見人がつくことはありません。


「成年後見制度についてよくわかっていないけど、何らかの支援の利用を考えている」という方は、「判断能力の低下」というのをひとつのポイントとして考えるとよいと思います。

すなわち、支援対象者(自分や自分の家族)が、現時点で判断能力の低下がある場合、法定後見制度の利用を検討するとよいでしょう。
また、今はまだ判断能力もしっかりしているけど、将来、判断能力が低下した場合に備えておきたいという場合は、現時点での任意後見契約の利用を検討することになります。

他方で、「息子は既に成人しているんだけど、頼りないから、誰かにその補佐役をしてほしい」というような場合、これは、法的な意味での後見の対象にはなりません。
もちろん、個人的に何らかの契約をして、財産管理や契約手続等の包括的なサポートを受けるということは可能ですが、それは個別の契約の話になります。


それから、当然ながら、法定後見も任意後見も、本人が生存中の支援をする制度です。
死後のことを頼みたいという場合は、依頼する内容によって、色んな制度を使い分ける必要があります。
死後事務委任契約を締結したり、遺言執行者を指定したり、あるいは、やや特殊な場面ですが、幼い子供を残して亡くなる可能性があるときは遺言によって未成年後見人を指定することも可能です(民法839条)。

遺言による未成年後見人の指定というのは、法的な意味から外れた「後見人」のイメージに近いかもしれませんね。


では、今日はこの辺で。

(成年後見制度については、「成年後見制度入門」以下のシリーズ記事参照)

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