司法書士の岡川です。
前回、法律の条文に出てくる「又は」の使い方を説明したので、ついでなので「及び」と「並びに」の使い方も説明しておきましょう。
2つの事項があって、その両方を対象としたい場合は、
A及びB
と書きます。
事項が3つ上ある場合は、「A及びB及びC」ではなく、
A、B及びC
のように、最後の1回だけ「及び」を使い、それ以外は、「、」(読点)で区切ります。
「又は」の場合と同様、ABCが動詞である場合は、
Aし、Bし、及びCする
のように書きます。
また、「AとB」という事項と、Cという事項を並列にしたい場合は、
A及びB並びにC
と書きます。これは、「『AとB』とC」という意味です。
応用として、「『AとB』と『CとD』」という意味にしたければ、「A及びB並びにC及びD」となります。
具体例を民法から引っ張ってきましょう。
民法729条は、「養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。」と規定しています。
「及び」と「並びに」がたくさん出てきて、パッと見ややこしくなっていますが、条文の読み方のルールさえわかっていれば、難しいことはありません。
「養子及びその配偶者」並びに「養子の直系卑属及びその配偶者」
と
「養親及びその血族」
との親族関係は、離縁によって終了する。
というふうに読めるわけです。
さらに、階層が3段階以上となれば、「及び」「並びに」の上位の語が存在しませんので、後は全部「並びに」を使います。
つまり、「『(AとB)とC』とD」を表したければ、
A及びB並びにC並びにD
というふうになります。
「並びに」が2回出てくるのは、階層が3段階以上であるからであって、「AとB」とCとDが並列になっているわけれはありません。
「AとB」とCとDが並列なら、
A及びB、C並びにD
となります。
ところで、一般的な日本語では、AとBのように事項が2つしかない場合であっても、
A並びにB
とか
A若しくはB
のようにいうことはあります。
しかし、法律の条文ではこれらの用語には優先順位があり、「又は」が使われていないところに「若しくは」は使えませんし、「及び」が使われていないところに「並びに」は使えません。
したがって、パッと見で
A並びにB
という文言が目に入ったら、必ずその前後を見て「A1及びA2」とか「B1及びB2」というふうになっていないかを探さなければいけません。
法律の条文は、ルールを知らないと正確に読めませんが、逆に、ルールさえ知っていれば、複雑な条文もある程度は内容を把握することが可能なのです。
まあ、ルールを知っていても、条文が複雑すぎるものを読むのは非常に苦労しますが。
では、今日はこの辺で。
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