認知症の高齢者が、適切な支援を受けていなかったばかりに自宅を失うことになった(なりそうな)事件がありました。
認知症、欠席裁判で敗訴 北海道・札幌の男性、自宅競売に
認知症の高齢男性が民事訴訟を起こされ、訴えられたことを認識しないまま「欠席裁判」で敗訴する判決が昨年暮れ、札幌地裁で言い渡された。訴えた不動産会社の請求通り、男性の自宅を競売にかける判決が確定した。男性は住む家を失う可能性がある。
ここには、色々な問題が含まれているので、ひとつひとつ順を追って説明をしていこうと思います。
まず、事件類型としては共有物分割請求事件です。
ということでまずは、「共有」について。
1つの物について、複数人が権利(所有権)を有している場合の権利関係を「共有」といいます。
各共有者は、共有物の「持分」を有します。
共有者は、持分に応じて共有物全体を使用することができます。
例えば、夫婦で家を買って共有名義(持分2分の1ずつ)にしている場合、「妻は家の南側半分だけ使える」とかいうことにはならず、共有者全員が共有物全体を使うことができます。
使い方については、共有者間の話し合いによって決めればよいことです。
共有物は「皆で所有している」状態なので、共有物全体を処分する(家を取り壊す、売却する、など)ような場合は、共有者全員の合意が必要になります。
しかし、共有持分については、それ自体が個々の共有者の権利なので、自由に処分することが可能です。
「この家飽きたわ」と思えば、妻が「2分の1の共有持分だけ第三者に売る」ことも可能です。
もっとも、一般的には、家の共有持分だけを買い取る人はいないので、持分を売りたくても買い手はあまりいません。
もれなく見ず知らずのおっさん(夫)がついてくる物件を、買っても使いようがないからです。
ところが、持分の買取りを(専門的に)行っている不動産業者もいます
「持分買い取ります」という広告をたまに見かけますね。
彼らは、もちろん、見ず知らずのおっさん(夫)と一緒に住むことを目的としているのではなく、転売が目的です。
誰も買いたがらない「持分だけ」の財産価値は、建物全体の価値に、単純に持分割合を掛けた額よりも当然安くなります。
つまり、不動産業者としては、価値が低いものだから安く買い取ることができるわけです。
他方、安くても持分を手放したい人もいるわけで、例えば相続などで見ず知らずの遠い親戚同士で共有になってしまった場合など、さっさと共有関係から抜け出したいと思うでしょう。
両者の利害が一致するところにビジネスが成り立つわけですね。
今回の事件も、5分の1の持分を有していた元妻が、不動産会社に持分を売ったことに始まります。
離婚した元妻が既に住んでいない家の持分を持ち続けるメリットもないため、安くても買ってくれるのであれば不動産会社に売るのは合理的な判断です。
他方で、不動産会社は、財産的価値の低い「持分だけ」を買い取り、共有者になってどうするのか。
長くなったので、次回に続きます。
では、今日はこの辺で。
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