2014年3月28日金曜日

略式起訴とは何ぞや

司法書士の岡川です。

東京都の猪瀬前知事が公職選挙法違反で略式起訴されたようです。

略式起訴とは何が略式なのでしょうか。


検察が、裁判所に対して犯罪に対する処罰を求めて訴えること「起訴」(公訴の提起)といいます。
検察に起訴されると、原則として公判期日が指定され、公判、すなわち法廷での裁判手続が行われることになります(刑事訴訟法273条)。

このような、検察が裁判所に公判を求める原則的な形態の起訴は、「公判請求」ともいわれます。

これに対し、一定の軽微な事件などでは、裁判所は、公判手続を経ることなく、簡易な方法で刑罰を科して手続きを終わらせることができます。
公判手続を経ないで刑罰を科す裁判を「略式命令」といいます。

この略式命令を求める際の起訴のことを、俗に「略式起訴」といいます。

略式とはいえ、起訴はきちんと起訴状を提出してなされます。
その上で、略式手続に乗せるには、検察が起訴と同時に略式命令の請求をすることになります。
具体的には、起訴状の記載が公判請求だと「下記被告事件につき、公訴を提起する。」とあるところが、「下記被告事件につき、公訴を提起し、略式命令を請求する」となるわけです。

略式手続では、比較的短期間で、法廷に出ることなく手続きが終わるので、被疑者にとっても利益があります。
その一方で、公判を省略して検察の請求と裁判官の判断だけで刑が決まるので、被疑者の権利を侵害することになりかねません。

そこで、略式手続にはいくつかの決まりがあります。

まず、略式命令で科すことができるのは、100万円以下の罰金又は科料のみ。
懲役とか死刑とかを、公判を経ずに決めてしまうのは危険だからです。

それから、略式手続によることについて、被疑者に異議がないかを確認しなければなりません。
被疑者の意向を無視して略式手続によることはできないのです。

さらに、略式命令を受けた後、不満があれば正式裁判の請求をすることができます。
きちんと公判手続への道は確保されているわけですね。


ちなみに、起訴された事件のうち約8割は略式起訴です。


では、今日はこの辺で。


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