2014年3月7日金曜日

飼い犬が他人の飼い犬に殺されたら?

司法書士の岡川です。

昨日、動物占有者の責任について書いたら、今日も立て続けに動物の事件が報じられています。

中型犬が登校中児童4人かみつき、1人重傷3人軽傷(毎日新聞)

愛犬かみ殺され、損害賠償 地裁足利支部(下野新聞)


ひとつめの事件は、飼い犬なのか野良犬なのかまだ分かりませんが、首輪をしていたということなので、飼い犬が脱走したのかもしれないですね。
その場合、昨日紹介した事件と同じで、買主は占有者責任を問われることになります。


ふたつめの事件は、殺されたのは人間ではなくて、犬のようです。

足利市で昨年2月、近所の飼い犬に愛犬をかみ殺されたとして、群馬県太田市の60代の母親と30代の娘が、かみついた犬の飼い主で足利市の30代女性に慰謝料など約540万円の損害賠償を求める訴えを宇都宮地裁足利支部(池田知子裁判官)に起こし、6日、第1回口頭弁論が開かれた。
犬や猫は、どんなに家族同然であっても、法律上は「物」扱いであり、人が殺されたときのような慰謝料というのは基本的には認められないのが実務の現状です。
車を壊されたりしても慰謝料はもらえない(修理費は賠償してもらえる)のと同じです。

もっとも、最近では、愛犬を殺された場合に慰謝料が認められる例も増えていますが、そうはいってもその額は人が殺された場合とは比べ物にならないくらい低額です。
せいぜい10万~30万円程度が限度です。
治療費などを合わせても、540万円(それに近い金額も)の損害が認められることは、まずあり得ないと思いますが、飼主の気持ちとしては、それくらいの思いはあるでしょう。

私も、飼い犬が殺されたら、それくらい請求していたかもしれません。
まあ、無理やり540万円も請求する場合、弁護士費用がもったいなすぎるので、自分でやりますが。

請求額をいくらに設定するかは、訴える側の自由ですから別に何の問題もないのですが、訴訟費用や弁護士費用が高くなることだけは気を付けないといけません。
(たぶん弁護士も着手金を低額に抑えているのでしょうけど・・・)


そういえば、昨日は書き忘れましたが、飼い犬が他人を死傷させた場合、刑事上も過失致死罪に問われる可能性があります。
場合によっては(大型犬の場合など)、重過失致死罪です。

(少なくとも現代においては)刑法は、人間の行為に対して適用されるものなので、犬はもちろん罪に問われることはありません。
しかし、「犬をきちんと管理していなかった」という過失が飼主にある場合、それによって他人に傷害を与えたり死亡させたりすると、それは、人間の行為(不作為を含む)なので刑事責任を問われることになります。

ところが、ふたつめの事件で、(被告側の)飼主が罪に問われることはありません。
やはりこれも、犬は「物」だからです。
もし、故意に犬を殺されたということになれば、器物損壊で告訴してやればいいのですが、日本の刑法に「過失器物損壊罪」というのは存在しないので、過失で殺された場合は、犯罪が成立しないのです。

人は誰しも、不注意で何かを壊してしまうことはあるもので、 それを全て犯罪にしていたらキリがないですからね。


こういう例もあるということで、犬を飼っている人は、何かしらの個人賠償責任保険に入っておいたほうがいいかもしれませんね。
自動車保険や火災保険の特約でついているかもしれないので、飼い犬が他人に損害を与えた時は、とりあえず、自身が加入している損害保険会社に連絡してみましょう。


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