一般的に、金銭の支払いまでに一定の期間がある場合、その間、債務者(一定期間支払わなくていい側)は「自由に使える」という利益を得て、逆に債権者(一定期間支払ってもらえない側)は「自由に使えない」不利益を負うことになります。
たとえば、100万円を借りて1年後に返す場合、借りた側(債務者)は1年間、それを元手にお金を稼ぐことも可能です。
他方、貸した側は、貸してしまえば他で運用することはできませんし、貸したお金が返ってこないリスクも負わなければなりません。
「100万円貸して100万円返してもらう」というのは、差し引きゼロのようにみえて、実は貸した側が損をしているわけです。
そのため、金銭債務の支払時期が一定期間後である場合、債務者がその利益の対価として一定割合の金銭を支払う約束をすることがあります。
そこで支払われるべき対価を利息といいます。
原則として、本体の契約(例えば、100万円貸すから1年後に100万円返せという契約)とは別に利息を払うという契約(特約)が必要です。
ちなみに、民法では法定利率を年5%としていますが、これは当事者同士が(利息制限法に違反しない範囲内で)自由に決めることができます。
さて、ここまでが、「支払うまでに時間的猶予を与えれば不利になる(損をする)ので、その分の『利息を足して』調整する」というお話。
では、「本当は将来もらうはずであったお金を早く貰った」場合どうなるか。
この場合、逆に「早く貰った」側が得をすることになります。
そこで、本来であれば1年後に支払ってもらうべきお金を今の時点で先に支払ってもらうなら、逆に「利息分を差し引いて」調整する必要があります。
そのための計算を中間利息控除といいます。
いくら控除すべきかを算出するための計算式は、利率を「i」、年数を「n」とすれば、
1 ÷ ( 1 + i )^n
で求められます。
これで求められる値をライプニッツ係数といいます。
例えば、「2年後に支払われるはずの100万円を支払ってもらった」という場合、法定利率で2年のライプニッツ係数は、
1 ÷ 1.05^2 ≒ 0.9070
となります。
中間利息控除をするには、本来支払われるべき100万円にこの係数を乗じて、
1,000,000円 × 0.9070 = 907000円
つまり、907,000円が「2年後に支払われるべき100万円を今支払ってもらうとした場合の妥当な支払額」ということになります。
どういうときに中間利息控除の計算をするかというと、将来の逸失利益の計算をする場合です。
例えば、交通事故で被害者が死亡した場合、「今後10年間、毎年1000万円稼いでいたはずだ」とすれば(生活費控除等の細かい点はひとまず無視)、1億円の損害が出たことになります。
しかし、今後10年かけて稼いだはずの1億円を、今の時点で一括で全額支払え、というのは妥当ではありません(利息分が不公平)。
そこで、先に一括して支払う代わりに、中間利息は控除することになります。
この場合、上記の計算と違って、少し計算式が複雑になります。
10年後に1億円ではなくて、「1年後に1000万円+2年後に1000万円+3年後に1000万+・・・」の総額1億円だからです。
この場合の計算式は、
{ 1 - ( 1 + i )^-1 } ÷ i
となります(前の計算式で求められた値を全部足せば同じになるはずです)。
法定利率5%で10年のライプニッツ係数(年金現価)は、「7.7217」なので、「今後10年間、毎年1000万円稼いでいたはずの人」が、死亡によって失った利益として損害賠償請求できる額は、
10,000,000円 × 7.7217 = 77,217,000円
ということになります。
こうなると、「2000万円も賠償額が減るのは納得できない!毎年1000万円、総額1億円支払え!」と言いたくもなりますね。
事情によっては、そういう支払いも認めらるのですが、基本的には中間利息を控除したうえでの一括払いになります。
ちなみに、いちいち考えて計算しているとめんどくさいですが、実務上は「係数表」というものがあるので、平均年収と死亡時の年齢がわかれば簡単に計算できるのです。
では、今日はこの辺で。
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