前回は過失相殺の話をしましたが、その前に「相殺」という言葉について触れておいた方がよかったかもしれないですね。
繰り返しですが、相殺は「そうさい」と読み、「そうさつ」でもなければ「あいさつ」でもありません。
意味としては、「差し引く」とかそんな意味です。
過失相殺は、加害者の過失と、被害者の過失を差し引いて損害賠償の額を決める制度です。
「相殺」という一語で使った場合はまた別の制度で、「こっち側の債権と相手側の同種の債権を対当額で消滅させる意思表示」をいいます。
「対当額」であって「対等額」ではないので注意です。
こっち側の債権を自働債権(「自動」債権ではありません)といい、相手側の債権を受働債権(「受動」債権ではありません)といいます。
どういうことかというと、相手が自分に対して100万円の債権(例えば、売買代金債権)を有しているとします。
その場合、特に条件がなければ、相手はこちらに「100万円よこせ」ということができます。
そのときに、自分が同じ相手に対して別個の同種の債権(例えば、50万円の貸金債権)を有していれば、別個に「50万円返せ」ということもできますが、この両方を一気に精算するために50万円の限度(それ以下であればいくらでも構いませんが)で両方の債権を消滅させることができ、あとは残り50万円の売買代金債権のみが残る、という具合です。
相殺は、一定の条件を満たせば一方的な意思表示で行うことができ、「いや、50万円は別に払うから100万円よこせ」とは言えなくなります。
相殺は、現実に50万円支払ったのと同じ効果が生じるわけです。
一定の条件というのは、例えば、こちら側の債権がまだ弁済期になってない場合は相殺できない(これが許されると、相手側からすれば、弁済期前に強制的に債権を行使されたと同じことになるため)とか、不法行為によって生じた債務を受働債権とすることはできない(政策的なものですが、損害賠償は相殺なんかせずにきちっと現金で支払えということ)とか、そういうことです。
交通事故で怪我をさせて、1000万円の損害賠償債務を負ったとき、相手に対して「お前には1000万円貸してるから、それと相殺してチャラな」ということは許されません。
1000万円きちっと支払う必要があります。
逆に、被害者側から、「1000万円借りてたけど、損害賠償債権と相殺する」ということはできます。
とまあ、制度自体は直感的に分かりやすいものなので、とにかく誤字に注意しましょう。
では、今日はこの辺で。
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