2014年9月25日木曜日

逮捕について

司法書士の岡川です。

警察が何らかの犯罪の被疑者を見つけたら、その人を逮捕することがあります。

実際に逮捕をするのは基本的には警察なのですが、実は、逮捕するのが妥当かどうかを判断する権限を有しているのは、警察ではなくて裁判官です。
逮捕というのは、市民の身体を役人が無理やり拘束するものなので、慎重な手続が必要です。
したがって、公平な第三者(司法機関)である裁判官がまず判断しなければならないとされています。

これは、日本国憲法33条に規定された国民の権利(人身の自由)でもあります。

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。


そこで、原則として、裁判官が予め令状(いわゆる逮捕状)を発付して、警察はその令状に基づいて逮捕することになります。
これを「通常逮捕」といいます。


とはいえ、今まさに犯行が行われている現場にいて、犯人が目の前にいるのに「今から裁判所に令状取りに行ってくるから、ちょっとそこで待ってろ」とか言って犯人を放置して裁判所に令状を請求しに行くというアホなことはできません。
日本国憲法でも明文で例外とされているように、現行犯人を逮捕するのに令状は不要とされています。
これを「現行犯逮捕」といいます。

現行犯逮捕は、警察じゃなくても、一般市民でもすることができます。
ひったくり犯を目撃した人が犯人をその場で取り押さえて警察に引き渡すという行為は、現行犯逮捕ということになりますね。


それからもうひとつ例外がありまして、現行犯ではないものの、一定の重大犯罪の被疑者を見つけたときで、「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」(刑事訴訟法210条)という要件を満たせば、逮捕状なしで逮捕することができます。
これを「緊急逮捕」といいます。

緊急逮捕は、あくまでも例外中の例外(そのため、憲法違反とする説も無いことは無い)なので、あとから逮捕状を請求しなければなりません。


ちなみに、逮捕によって被疑者を拘束することができるのは、一般的には最大72時間となっています(警察で48時間、検察に送致されて24時間)。
逮捕されるとそのままずっと牢屋に繋がれる…というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、逮捕しただけでは72時間以上留置し続けることはできないのです。
といっても、別の容疑で再逮捕することができますので、重大な事件などでは、実際にはもっと長い間拘束され続けていることが少なくありません(とりあえず最初は死体遺棄容疑で逮捕して、期限切れになる前に殺人容疑で再逮捕するなど)。
それも限界がありますけどね。


なお、上記の現行犯逮捕の要件を満たすような場合を除き、不法に他人を逮捕したら、逮捕罪(刑法220条)という犯罪が成立しますので、絶対にやめましょう。
また、警察が職権濫用して逮捕したような場合は、「特別公務員職権濫用罪」という結構重い犯罪が成立します。
それだけ逮捕というのは重大な行為だということです。


では、今日はこの辺で。

この記事が「面白い」「役に立つ」「いいね!」「このネタをパクってしまおう」と思ったら、クリックなどしていただけると励みになります。
↓↓↓↓↓

※ブログの右上に、他のランキングのボタンもあります。それぞれ1日1回クリックできます。

0 件のコメント:

コメントを投稿