2014年10月2日木曜日

遺留分について

司法書士の岡川です。

相続が開始すると遺産は相続人に帰属しますが、生前に遺言書を書いておくことによって、遺産の処分方法について決めることができます。

「自分の遺産は全て長男に相続させる」という内容でもいいですし、「自分の遺産は近所の八百屋のおじさんに全て遺贈する」というものでも構いません。
遺言の方が優先されますので、法定相続分を有する相続人であっても、必ずしも遺産を承継することができるとは限らないことになります。

もっとも、残された家族の生活を保障する必要がありますし、財産が貯まるまでには家族の寄与もあったと考えられます。
遺言によって自由に遺産の処分方法を決めることができるといっても、さすがに近親者に1円も残さないというのは酷だろうということで、「遺留分」という制度が存在します。

遺留分とは、遺産のうち、近親者の権利として確保されている一定の割合をいいます。
この遺留分を侵害された人は、その限度で請求できるとされています。


遺留分を有するのは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の者です。
つまり、配偶者や子(いないときはその代襲相続人)、直系尊属が相続人になるときは、その人が遺留分権利者となっています。

兄弟姉妹は第三順位の相続人ではありますが、遺留分はありません。
したがって、兄弟相続の場合(子や孫がおらず、直系尊属もいない場合)に、遺言で特定の人に相続させる(遺贈する)旨の意思表示がなされていた場合は、誰の遺留分も侵害しませんので、その遺言書の内容どおりに遺産が承継されるということです。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は、遺産の3分の1。
それ以外の場合では、遺産の2分の1が遺留分です。
各相続人は、この遺留分の中で、法定相続分に応じて権利を有しています。

例えば、相続人が配偶者と2人の子で、遺産が3000万円の場合、遺留分全体は遺産の2分の1の1500万円です。
配偶者はその2分の1なので750万円、子は残りの2分の1を等分するので375万円ずつを、遺留分として確保することができます。

相続人が配偶者と両親だった場合、遺留分全体は同じく1500万円ですが、配偶者:直系尊属の法定相続分の割合は2:1なので、配偶者の遺留分は1000万円、両親の遺留分はそれぞれ250万円ずつです。

もし配偶者がおらず、相続人が両親だけだった場合は、遺留分としては遺産の3分の1なので1000万円、それを両親が等分して500万円ずつの遺留分を有することになります。

どのような遺言の内容であったとしても、この割合については、侵害することができないものとして確保されています。


なお、遺留分を侵害するような遺言であっても、遺言自体は有効です。
あくまでも遺留分権利者は、「遺留分を侵害した分を返せ」と請求する権利を有するにすぎません。

この「返せ」という請求を「遺留分減殺請求」といいます。
減殺は「げんさい」と読みます。「げんさつ」ではありません。

逆に言えば、遺留分権利者が遺留分減殺請求をしなければ、遺言の内容どおりに遺産を承継することができます。


実際の遺留分を算定するには、上記のような「3000万円のうちの1500万円」といった単純なものではなく、色々と複雑な計算が必要になってきますが、配偶者や子、直系尊属には遺留分があるということさえ覚えておけば、あとは法律の専門家(例えば司法書士とか司法書士とか司法書士とか)に相談するとよいでしょう。


では、今日はこの辺で。


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