2014年9月29日月曜日

遺言のススメ

司法書士の岡川です。

今までこのブログで相続の話題は色々書きましたが、遺言について書いていないことに気づきました。
ので、今日は遺言の話。

遺言、一般的には「ゆいごん」とも読まれますが、法律用語としては「いごん」と読むのが一般的です。
とはいっても「いごん」という読みが法律で規定されているわけでもないので、どっちで読んでも構わないのですが。
ちなみに広辞苑で調べてみると、「いごん」と「ゆいごん」が別項目で載っていました。

それはさておき、遺言です。

遺言とは、自分が死んだときに効力が生じる意思表示です。
したがって、死ぬ前のことについては遺言として効力を有しません。
例えば、「自分の老後はこの施設に入りたい」といったことを遺言書に書いても、その部分は法的には遺言としての意味は一切ありません。

死後のことについての意思表示ですから、間違いがあっても訂正ができませんし、曖昧な部分を質問することもできません。
したがって、遺言は法律で厳格に方式が定められています。
方式に則っていなければ、それだけで遺言は無効になります。


一般的な遺言の方式としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
この3種類は、きちんと方式が守られていれば、効力としてはどれも同じです。
自筆証書より公正証書の方が強いとかいったことはありません。

自筆証書遺言は、全てを「自書」する遺言です。
住所氏名だけでなく、全文を手書きで書く必要があります。
自分で書くので、費用を節約できて手軽に作成できますが、細かくいろいろなルールが法律で定められており、どこかに不備があると無効になる危険があります。

公正証書遺言は、文字通り公正証書で作成する遺言で、公証役場で作成します。
「遺言者が口述したものを公証人が筆記する」というタテマエですが、実務上は、公証人が先に作成しておき、それを遺言者に読み聞かせて、間違いなければ署名押印するという流れになります。
公証人の手数料が必要だったり証人を用意したりと、自筆証書に比べて手間と費用がかかりますが、紛失や偽造も防げますし、内容的にも確実なものが作成できます。

秘密証書遺言は、自分で作成した遺言を公証役場で封印するもの。
自筆証書と違ってパソコンで作ってもいいのですが、あまり使われていません。
どうせ公証役場に行くなら、公正証書遺言にした方が確実ですからね。
遺言の内容を死ぬまで秘密にしておきたい場合に使うものです。


さて、遺言の内容ですが、死後のことを書いてあっても、遺言として法的に意味のある事項とそうでない事項があります。
遺言書に書いて法的に意味のあるものを「遺言事項」といいます。

遺言事項には、「誰に何を相続させるか」「相続人以外に何を遺贈するか」といった遺産の処分や分配方法に関する事項、未成年後見人の指定や認知などの身分関係に関する事項などがあります。

それ以外に、例えば「兄弟仲良く暮らしなさい」とか「死んだあとは盛大に葬式を挙げて下さい」といったことは、書きたければ書いても構いませんが、書いても法的には意味がありません。
これを「付言事項」といいます。

個人的には、遺言書にはあまりごちゃごちゃと付言事項は書かないほうがよいと考えていますが、この考え方は人それぞれですね。


遺言は、1回書いても、何度でも書き直せます。
遺言を書き直したら、新しい方が有効になり、古い方の内容は撤回したことになります。

遺言は、紛争や面倒な手続を回避するのに非常に役に立ちます(参照→「厄介なのは相続『争い』だけではない」)。
死後に何らかの面倒なことになりそうな事情がある方は、遺言の作成を検討してみてください。


では、今日はこの辺で。

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