北海道大学の学生が、私戦予備罪で事情聴取を受けたというニュースがありました。
非常に珍しい罪名です。
過去に適用された事例は無いかもしれませんね。
私戦予備罪も含め、刑法の前の方に規定されている犯罪類型(内乱罪や外患誘致罪など)というのは、国家的法益(つまり、そこで守られている利益が国家に帰属するようなもの)に対する犯罪であり、それも「国に直接喧嘩を売るようなレベルのもの」が置かれています。
法定刑が「死刑一択」という、日本でもっとも重い犯罪である外患誘致罪は81条、私戦闘予備罪は93条です。
日本では国家転覆を図ったりするような事例はそうそうないので、94条(中立命令違反)までの犯罪は、基本的には適用されることがありません。
そんな中の私戦予備罪、これは「国交に関する罪」として規定されており、「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備をした者」というのが要件です。
法定刑は、3月以上5年以下の禁錮です。
ちなみに、予備ではなくて陰謀(つまり、まだ準備をしていない段階)であっても、「私戦陰謀罪」として、 やはり同じ規定が適用されます。
実は、色々と珍しい犯罪類型です。
まず、「私戦罪」という犯罪が存在しません。
例えば、殺人予備罪には、原則類型である「殺人罪」があって、その予備段階を処罰するものですが、私戦予備罪にはそういうのがありません。
予備罪が予備罪として単独で存在するので、こういう犯罪を「独立予備罪」と呼ぶことがあります。
それから、「自首した者は、その刑を免除する。」という、救済規定があります。
基本的には、犯人が自首した場合の救済は、「刑を減軽することができる」(42条)という任意的減軽なのですが、減軽ではなく免除、しかも「免除できる」のではなく、必ず免除されます(必要的免除)。
必要的免除の規定はほかに、内乱予備(陰謀)罪、内乱等幇助罪で暴動前に自首した場合というのがあるだけです。
私的に戦闘することを企てて、警察にバレる前に、「戦闘の準備をしてましたけど、やめました」と名乗り出れば、刑を免れるということです。
そんな申告を受けたら警察も困惑すること間違いなしです。
実際にそんなことがあるのか不明ですが、複数人で準備していて、1人が離脱して自首するというパターンはありそうですね。
なお、「刑を免除する」というのは、無罪ということではなくて、「犯罪は成立するけど、刑は科されない」という意味です。
「刑は科さないであげるから、実行する前に断念しなさい」という趣旨ですね。
今回は、今のところまだ事情聴取ということで、あまり具体的な中身がよくわからないのですが、場合によっては私戦予備罪で逮捕、起訴されたり有罪になったりするのでしょうか。
注目です。
では、今日はこの辺で。
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