前回の「三審制」の続きです。
その前に復習ですが、「裁判」には、刑事訴訟で有罪無罪を決めたり民事訴訟で請求を認容したり棄却したりする「判決」のほか、手続中の付随事項について判断する「決定」や「命令」、家事事件手続での判断である「審判」といった種類がありました(「裁判」の意味)。
判決…口頭弁論に基づいて裁判所がする終局的判断や重要な事項の判断
決定…裁判所がする付随的派生的事項や暫定的事項についての判断
命令…裁判長や受命裁判官がする付随的派生的事項や暫定的事項についての判断
審判…家事事件手続法に基づき家庭裁判所が行う判断
これらの裁判に対して、3回まで審理を受ける(2回上訴する)ことが認められる制度を「三審制」といいます。
さて、ではまず最も重要で中心的な判決手続での上訴について。
第一審(訴えを提起した1回目の審理)の判決に対する上訴を「控訴」といいます。
そして、第二審(控訴審)の判決に対する上訴を「上告」といいます。
第一審が地方裁判所や家庭裁判所なら、判決に不服があればひとつ上の高等裁判所に控訴することができます。
そして、控訴審判決に対して不服があれば、さらにひとつ上の最高裁判所に上告することができます。
これに対し、第一審が簡易裁判所なら、控訴はひとつ上の地方裁判所にします。
控訴審判決に対して不服があれば、上告は高等裁判所にします。
もし第一審が高等裁判所なら、最高裁判所に控訴を……することはできません。
それぞれの裁判所の所管事項について定めている裁判所法では、最高裁場所は上告を扱うことになっていますが、控訴を扱うという規定が存在しないのです。
なので最高裁判所は控訴審にはなりません。
ではどうなるかというと、第一審判決に対して控訴ではなく上告することになります。
もちろん最高裁判所より上の「超最高裁判所」なんかはありませんので、審理はここで終わり。
つまりこの場合は二審制となります。
そもそも第一審が高等裁判所になる場合があるのかというと、実はあるのです。
刑事事件では内乱罪の審理がこれに当たりますし、一部の行政訴訟(特許訴訟である審決取消訴訟など)も第一審が高等裁判所になっています。
ところで、サラッと書きましたが、場合によっては三審制なのに最高裁判所まで行かないことがあること気づきましたか?
「第一審が簡易裁判所の民事訴訟」は、第二審(控訴審)は地方裁判所で第三審(上告審)は高等裁判所なので、最高裁判所に行かずに3回の審理が終わります(刑事訴訟は第二審が高等裁判所になるので、上告審は最高裁判所で行います)。
しかし、たとえ訴額140万円以下の訴訟であっても憲法違反などの事由があれば、憲法の番人たる最高裁判所に最終的な判断を求める道が開かれている必要があります。
そこで、「憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とする」場合に限り、高等裁判所での上告審判決が出た後に更に最高裁判所に上告することができます。
これを特別上告といいます。
もっとも、特別上告によって判決の確定は妨げられません。
もうひとつ特殊な例で、第一審判決に対して、控訴せずにいきなり上告する方法もあります。
これは、民事では飛躍上告(飛越上告)、刑事では跳躍上告といいます。
さて、判決以外の裁判に対する上訴についても書きたかったのですが、意外と長くなったのでまた次回に持ち越し。
では、今日はこの辺で。
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