2015年1月29日木曜日

略取と誘拐

司法書士の岡川です。

突然ですが問題です。

暴行や脅迫を用いて、無理やり人を連れ去る行為を何というでしょう?





答え:略取





例えば、ナイフで脅して無理やり車に乗せて連れ去ったりするのは、実は「誘拐」ではありません。
これは「略取」といいます。

「拉致」というのも意味的には間違いではないでしょうが、「拉致」という語は、法律用語としては北朝鮮による拉致問題にしか使われません。


法律(刑法)上、「略取」と「誘拐」は明確に区別されています。

何が違うかというと、略取というのが、上記のとおり暴行や脅迫という手段で連れ去る行為。
誘拐は、欺いたり誘惑したりして連れ去る行為をいいます。

つまり、ナイフをちらつかせて車に乗せるのは「略取」で、「親戚のおじさんだよ。お母さんからお迎えを頼まれて来たよ」と言って子供を車に乗せて連れ去るのが「誘拐」です。

略取罪と誘拐罪を合わせて「拐取罪」といいます。
区別はされていますが、略取と誘拐で刑の重さは変わりません。


拐取罪には、色々な類型があります。

まず、どんな目的であろうと、未成年者を拐取すれば犯罪となります(未成年者略取・誘拐)。

また、未成年に限らず、「営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的」で人を拐取すれば、やはりこれも犯罪となります(営利目的等略取・誘拐)。

身代金目的というのも、わいせつ目的と同じくらいメジャーですが、もちろんこれも犯罪です(身代金目的略取・誘拐)。

マイナーどころでは、国外移送目的で拐取する行為も犯罪です(所在国外移送目的略取・誘拐)。


未成年者の拐取は、身代金目的とかわいせつ目的とかがなくても成立します。
たとえば、「1人で寂しそうにしていたから、しばらく一緒に遊んであげていた」という場合でも、親の了承を得ていなければ、場合によっては誘拐になるかもしれません。

「家出した中学生を家に誘って一泊させる」というのも犯罪です。
家出した中学生を見つけたら警察に届けるべきであって、勝手に連れ込んだりすべきではないのです。

未成年者との接し方は注意しましょう。


ちなみに、身代金目的の拐取が一番罪が重くて、最高で無期懲役になります。
また、未遂どころか「予備」の段階でも犯罪(予備罪)が成立します。


では、今日はこの辺で。

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