司法書士の岡川です。
皆さん、「担保」(たんぽ)というものをご存じでしょうか。
担保とは、債務不履行に備えて債務の弁済を確保するための手段として債権者に提供されるもののことをいいます。
債権者があらかじめ担保を取っておくことで、仮に債務不履行になったとしても、その担保から債権(の一部)を回収することができます。
法律の世界では常識的に使われている概念ですし、金融にかかわっている人にとってもごく普通の用語だと思います。
一般にはどこまで浸透している用語なのかちょっと分からないのですが、例えば、住宅ローンなどで遭遇することがあります。
ドラマとかで「○○を担保にお金を借りた」みたいな台詞が出てくるから知っている人も多そうですが、日常会話の中で「今日ちょっと担保とってくるわ~」みたいに使われるほどありふれた用語でもありませんよね。
今日はそんな「担保」の話。
法的な意味での担保には、大きく分けて2種類あります。
すなわち、「物的担保」と「人的担保」です。
「物的担保」とは、特定の財産(物や権利)が担保になっているものです。
物的担保は物権の一種であり、これを担保物権ともいいます。
担保物権には色々な種類があり、そのうち民法に定めがあるものを典型担保物権、それ以外を非典型担保物権といいます。
典型担保物権のうち有名なのが質権や抵当権ですね。
これらはいずれも、当事者の契約で設定することになります(=約定担保物権)。
例えば動産(不動産以外の物。家具とか機械とか)に質権を設定する場合、債権者(質権者)にその動産を引き渡します。
債務者が債務不履行に陥ったら、債権者はそれを売って、その代金から優先的に債権を回収するわけです。
抵当権は、主に不動産などに設定されますが、担保を提供する側(債務者等)が自己の不動産に抵当権を設定しても、不動産を債権者(抵当権者)に引き渡す必要はなく、引き続き使用収益することができます。
銀行で住宅ローンを組んで家を買ったとき、住宅に住宅ローンの担保として抵当権が設定されます(抵当権設定登記がなされます)。
担保になってはいますが、所有者として居住することが可能です。
ただし、債務不履行に陥った場合、その不動産は売却されるので、その時には出ていかなければなりません。
債権者は売却代金から優先的に債権を回収することになります。
このように、担保の提供者が、資産価値のある「物」を債権者がいつでも売れる状態にしておき、実際に債務不履行になったら債権者がその「物」を売って優先的に債権を回収する。
大まかにいえば、担保物権のイメージはそんな感じです。
他方、「人的担保」というのは、保証人のことです(保証人の強化版である連帯保証人も含みます)。
保証人は、主たる債務者が債務を履行しない場合、代わりにその債務を負担します(保証人は、契約により保証債務を負います)。
物的担保が、担保の目的とした「特定の物」しか確保できないのと違い、人的担保では保証人の全財産を当てにすることができます。
保証人に資力がなければ意味がありませんが、保証人が十分な資産を持っていたら、強力な担保となります。
人的担保は物的担保と違って、主たる債務者が債務不履行に陥ったからといって「保証人を売り払って金に換える」ということはできません。
しかし、保証人も債権者に対して保証債務を負っているので、債権者は、究極的には保証人の財産に対して強制執行することも可能になります。
最悪の場合に差し押さえることができる財産が1人分増えるわけです。
もっとも、実際に強制執行するには、保証人に対する債務名義を取得する必要はあります。
このように、人的担保というのは、保証人に債務者と同じような責任を負わせる(金を借りたわけではないけど、返す義務を負わせる)ことで、債務の履行を確保する制度です。
まとめると、特定の「物」の財産価値を確保する(=いつでも売って代金を優先的に回収できる)のが物的担保、「人」の資力(その人の全財産)によって履行を確保するのが人的担保です。
何となくイメージできたでしょうか。
では、今日はこの辺で。
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